みちのく記念病院(青森県八戸市)の患者間殺人隠蔽(いんぺい)事件で、入院患者を殺害した男(59)を医療保護入院にするとの記載が、男の診療記録にあることがわかった。犯人隠避容疑で逮捕された石山哲容疑者(60)の氏名で被害者の死亡後に入力されていた。病院職員によると、これを受けて男は閉鎖病棟に移された。県警もこれらを把握しており、事件の隠蔽を図った証拠になるとみて調べている。
殺人事件は2023年3月に発生。当時院長だった石山隆容疑者(61)と、その弟で被害者と殺害した男の主治医だった哲容疑者は、うその死因が書かれた死亡診断書を遺族に交付するなどしたとして、犯人隠避容疑で逮捕された。
読売新聞が入手した同月13日の診療記録では、前夜に襲われた被害者の死亡からまもない午前11時の記載事項として、殺害した男について「情動不安定」「衝動行為が予想され」るなどとし、「医療保護入院が必要」とある。記入者名は「石山哲」だった。男の加害行為については触れられていない。
同日午後4時40分過ぎの記載には、「医療保護入院が必要」などとされた内容を「受領」とした看護師名がある。病院職員によると、殺人事件の発生を病院が県警に通報しないまま、男は院内の閉鎖病棟の一室に隔離された。殺人事件は、病院の対応に疑問を持った職員からの通報で県警が把握した。病院で男が逮捕されたのは3月28日で、その後、懲役17年の実刑判決が確定した。
医療保護入院は、精神疾患で治療や保護が必要な患者を本人の同意なく入院させる、精神保健福祉法上の制度。他人に危害を与える恐れがない人が対象で、厚生労働相に指定された精神保健指定医の診察を経て行われる。県警は、男が相部屋の入院患者を殺害していたにもかかわらず、哲容疑者が医療保護入院を判断し、事件の隠蔽を図ったとみている。
一方、死因を「肺炎」とした虚偽の死亡診断書については、被害者が心肺停止状態になった後、隆容疑者が複数の看護師を介し、入院していた認知症疑いの男性患者(当時89歳、昨年死亡)に作成を指示したと、病院職員が県警に説明している。男性患者には医師免許があり、対応できる医師がいない場合に死亡診断を任されていたため、院内で「みとり医」と呼ばれていた。
捜査関係者によると、石山隆、哲の両容疑者は調べに対し、いずれも容疑を否認している。