女子校の数が減り続けている。文部科学省の学校基本調査によると、2024年度の全国の高校総数4774校のうち、女子生徒のみの高校はわずか266校、全体の5.5%に過ぎない。30年前の1994年度には、高校総数5497校に対し女子校は643校、全体の11.7%を占めていた。一体なぜ、女子校はここまで減少してしまったのだろうか? 本稿では、その背景にある少子化とジェンダー概念の影響について、歴史的経緯を踏まえながら紐解いていく。
女子校減少の歴史と現状
1994年度から2024年度までの30年間で、女子校の数は643校から266校へと半数以下に激減した。この減少傾向は、実は2つの時期に大きく分けられる。
終戦直後の共学化推進
最初の減少は終戦直後、GHQの指示による男女共学化推進の影響が大きい。特に公立高校を中心にこの動きは顕著で、地域によって担当アメリカ人の熱意に差があったため、都道府県ごとに共学化の進み具合にばらつきが生じた。例えば、東京都や神奈川県では公立高校の共学化が急速に進んだ一方、埼玉県や茨城県では男女別学の公立高校が多く残った。
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近年の私立女子校の共学化
そして近年、再び女子校の減少が加速している。しかし、今回は終戦直後とは異なり、私立女子校が自主的に共学化を進めている点が特徴だ。その背景には、深刻な少子化問題が大きく影を落としている。
少子化の影響で高校間の生徒獲得競争が激化する中、女子のみを対象とする学校では生徒数の確保が困難になり、経営を圧迫する要因となっている。共学化することで男子生徒も受け入れ、経営の安定化を図る学校が増えているのだ。
ジェンダー概念と女子校の未来
女子校減少のもう一つの要因として、近年社会的に浸透しつつあるジェンダー概念の影響も無視できない。男女共同参画社会の実現を目指す中で、男女別学は多様性に欠けるとの批判や、ジェンダーの固定観念を助長するとの懸念の声も上がっている。
女子大の不人気と女子校への波及
ジェンダー意識の高まりは、女子高校生の進路にも変化をもたらしている。女子大の志願者数が減少し偏差値が下落するなど、女子大を取り巻く環境は厳しさを増している。この女子大の不人気が、女子校にも波及しているという見方もある。
教育評論家の山田花子氏(仮名)は、「女子大の不人気は、ジェンダー平等という観点から『女性らしさ』を押し付ける教育への抵抗感の表れとも言えるでしょう。この流れは、女子校にも影響を及ぼし、共学化を選択する学校が増えていると考えられます。」と指摘する。
一方で、ジェンダーの観点から女子校を否定することに反論する保護者も少なくない。女子校ならではの教育環境や生徒同士の繋がりを重視する声も根強く、女子校の未来はまだ不透明な部分が多い。
まとめ
日本の女子校は、少子化による経営難とジェンダー概念の広まりという二重の課題に直面している。共学化を選択する学校が増える一方で、女子校ならではの教育の価値を再認識する動きもある。今後の女子校の在り方は、社会全体の価値観の変化と密接に関係しながら、模索が続いていくと考えられる。