日本の基幹産業である自動車産業は、10年後にはどうなっているのでしょうか?EVシフトの行方、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の台頭など、様々な要素が今後の自動車業界を大きく左右します。この記事では、識者の意見を交えながら、勝ち組と負け組を予想し、日本の自動車産業の未来を探ります。
トヨタの未来:全方位戦略で現状維持なるか?
EV、HV、水素自動車と全方位戦略を展開するトヨタ自動車。この戦略こそが、変化の激しい自動車業界で生き残る鍵となるかもしれません。識者の小笠原泰氏(経営コンサルタント、明治大学国際日本学部教授)は、「トヨタは粛々とトレンドの変化に対応し、現状を維持できるのではないか」と予測しています。
トヨタ自動車の工場
日産・ホンダの課題:構造改革とシナジー効果は?
一方、日産自動車はゴーン氏失脚後、売れる車を生み出せていない現状が指摘されています。小笠原氏は、「構造的な問題で成長力を失う10年になる」と厳しい見方を示しています。また、日産と経営統合を発表したホンダについても、シナジー効果は未知数であり、今後の動向が注目されます。
スズキの強み:インド市場と軽自動車
スズキは、成長著しいインド市場での展開が強みです。EV生産も視野に入れ、インドでの更なる成長が期待されます。また、国内の高齢化や貧困化を背景に、軽自動車の需要増加も見込まれています。
トヨタの死角:SDVへの対応
盤石に見えるトヨタにも死角があります。それはSDVへの対応の遅れです。鈴木氏(識者)は、パソコン業界の例を挙げ、「SDVにシステムを供給するIT企業が高収益を得て、ハードである自動車本体を作る会社は儲からなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らしています。
SDVとは?自動車のスマホ化
SDVとは、ソフトウェアで性能を向上させられる新しい自動車技術のこと。いわば自動車のスマホ化です。今後の自動車業界において、SDVへの対応は不可欠と言えるでしょう。
勝ち組企業:技術力で未来を切り開く
自動車関連分野では、高い技術力を持つ企業が成長を続けると予想されます。安藤富士男氏(経済アナリスト)は、住友電気工業とデンソーを例に挙げ、その多角的な経営と技術力を高く評価しています。住友電気工業はワイヤーハーネスや光ファイバー関連製品、デンソーはトヨタ以外の自動車メーカーへの部品供給など、幅広い事業展開が強みとなっています。
10年後の自動車産業:変化への対応が鍵
10年後の自動車産業は、EVシフト、SDVの台頭など、大きな変化に直面するでしょう。これらの変化に対応できる企業だけが、勝ち残ることができるはずです。日本の自動車メーカーは、技術力と柔軟な戦略で未来を切り開いていく必要があります。