「生活保護受給者は恵まれている」の言説が“権力の不正”を誘発・助長する理由…“最低賃金・フルタイム労働”では「最低生活」以下の収入しか得られない“日本の病”とは


【画像】生活保護の不正受給の内訳(2023年(令和5年)度)

事実、その通りなのですが、中にはこれらをもとに「生活保護が手厚すぎる」「生活保護受給者は恵まれている」などと「生活保護バッシング」を行うものさえあります。しかし、それは批判を向ける対象を誤っており的外れであるのみならず、かつ生活保護制度への根本的な誤解に基づくとしか言いようのないものです。

そもそも「生活保護を受けている」というと「働いていない」と思われがちですが、それは大きな誤解です。現在の日本では、まじめに働いても生活が成り立たず、生活保護を受けざるを得ない境遇の人々が大勢います。とうてい「自己責任」などの浅薄かつ非人道的な言葉で切って捨てることができないほどの社会問題になっているのです。

今回は、生活保護を受けながら働く人々の実情をお伝えします。(行政書士・三木ひとみ)

働いても「最低の生活」さえできない人がいる

最低賃金が上昇しても、家賃や物価の高騰がそれを上回る状況の下、「働いているのに生活が成り立たない」という人が後を絶ちません。非正規雇用や短時間労働、あるいは病気・障害、育児や介護といった事情で、十分な収入を得ることができないまま、ギリギリの生活をしている人たちがいるのです。

生活保護は、そうした人々を支える制度でもあります。働いて収入を得たら、それに応じて保護費を減額する形で不足分を補うしくみになっており、就労による自立を目指すことができます。制度の本来の目的にかなった、ごくまっとうな利用のあり方です。

働く生活保護受給者の実態を広く社会に知らしめ、理解を深めることが、誰もが必要なときに生活保護制度に一時的に頼ることができ、健全な社会復帰がしやすい環境を整える上で重要です。

「なぜその人が生活保護を必要としているのか」という視点で見ると、「働いているのに生活保護を受けるなんてずるい」ではなく、働いても足りないほど生活が苦しい社会がおかしいのではないかと気付けるのではないでしょうか。



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