【AFP=時事】エクアドルの最大都市グアヤキル郊外のドゥランで、麻薬密売の巣窟に踏み込んだ警官隊が目にしたのは、骸骨の聖母「サンタ・ムエルテ」の祭壇だった。死の聖人の保護を求めて、ギャングたちは金銭、たばこ、酒類、フィギュア、聖具などをその足元に積み上げていた。
右手に大鎌、左手に地球を持つ不気味な骸骨像を祀った祭壇は、ドゥランに潜む犯罪者のアジトで急速に増加している。
「サンタ・ムエルテに運命を託せば、捕まらずに済む、あるいは目的を達成できると信じられている。サンタ・ムエルテはギャングの守護神だ」と、ドゥラン警察の上級幹部ロベルト・サンタマリア氏はAFPに語った。
匿名でAFPの取材に応じたギャングの元メンバーは、人間をいけにえとして捧げた仲間もいたと語った。「他の町から子どもをさらってきて、大きな仕事をするときに、サンタ・ムエルテの前でいけにえにしたんだ」
■「死の聖人」人気
「痩せた少女」や「純白の少女」といった異名を持つサンタ・ムエルテは、癒しと保護の守護聖人で、中南米の人々は死後の安全な旅を願って祈りを捧げる。
その起源は18世紀のメキシコにあるとされ、故郷では麻薬王たちによって崇拝されてきた。近年では、麻薬密売人や殺し屋が巣くうエクアドルのドゥランで人気が広まっている。
ギャングたちは祭壇に供物を捧げるだけでなく、サンタ・ムエルテのタトゥーを腕に入れ、サンタ・ムエルテの護符を首に掛けている。
サンタマリア大佐によると、サンタ・ムエルテは約6年前にメキシコからエクアドルに伝わった。同国最大のギャング「ロス・チョネロス」のメンバーが、悪名高いメキシコの麻薬組織「シナロア・カルテル」から訓練を受けた際、彼らの信仰も持ち込まれたという。
ドゥラン警察は2024年に行った摘発の約6割で、サンタ・ムエルテの祭壇を発見したとしている。
大都市のグアヤキルとドゥランは、エクアドルの暴力犯罪の中心地だ。ペルーやコロンビアから欧米にコカインを輸出する港に近いことがその一因となっている。