原発事故の風評被害に苦しみ、再度「被災」…農家たちの苦闘





夏井川決壊後のハウス内部。ガラスが割れ、周囲の水田はから流れついた稲が散乱している=10月13日午後2時5分、福島県いわき市(草野城太郎さん提供)

 台風19号や21号に伴う記録的な大雨は、収穫を控えた全国各地の農作物に甚大な被害をもたらした。平成23年の東京電力福島第1原発事故後、風評被害に苦しんだ福島県では、出荷がようやく軌道に乗り始めたところで再び壊滅的な打撃を被った人も。自然の猛威に翻弄されながらも、農家たちはボランティアの支援も受けながら、懸命に前を向こうとしている。

 ■「二重」の苦しみ

 「辺り一面が湖のようで、言葉が出なかった」

 夏井川の堤防が決壊し広範囲が浸水した同県いわき市の小川地区。ネギ農家の草野城太郎さん(45)は、自らが手がける自宅近くの農業用ハウスを高台から見下ろしたときの様子を、こう振り返る。

 押し寄せた濁流は、草野さんがハウスで青ネギを栽培している約1300坪の敷地を丸ごと飲み込んだ。一番高いところで約2・3メートルの高さまで冠水。苗や出荷前のネギなど、ハウス内にあった約10トンの作物はすべて流出した。

 すべて復旧するには数年かかる見通しで、再建費用なども含めて被害額は約2億円に上る。これまで年間約50トンのネギを出荷してきたが、復旧しなくては栽培も出荷もままならない。

 市内で唯一、ネギを水耕栽培しているという草野さんの頭をよぎったのは、原発事故の苦い記憶だった。風評被害もあり思うように商品を出荷できず、自分が育てたネギが並んでいたスーパーなどの小売店の棚には一時、市外で収穫されたネギが並んでいた。

 「一度失った棚のスペースを取り戻すのが難しいのは、散々味わった。今回も同じことになるのか…」。深いため息をついた。

 ■リンゴ、イチゴも

 大雨による農作物の被害は、東日本の広範におよぶ。中でも最も被害が深刻なのは、収穫の最盛期を迎えていたリンゴだ。

 千曲川の堤防が決壊し浸水した長野市の国道18号は「アップルライン」と呼ばれ、両側には多くのリンゴ農園や直売所が並ぶが、今回の水害で畑や直売所が軒並み泥水に漬かった。

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