カリキュラムの「標準時数」に着目
次期学習指導要領の改訂に向けて、文科相の諮問機関である教育課程企画特別部会の第1回会合が1月30日に開かれ、本格的な審議が始まった。そこでの大きなテーマが標準授業時数である。学習指導要領で示された各教科の内容を指導するのに要する時数の基礎となるのが標準授業時数で、これが多すぎることを表現した言葉が「カリキュラム・オーバーロード」である。標準授業時数が多すぎるために、子どもたちの負担は大きくなり、教員の多忙も解消されない状況となっている。新たな視点でカリキュラム・オーバーロードの実態を明らかにした東京学芸大学現職教員支援センター機構教授の大森直樹氏に話を聞いた。
【グラフを見る】正確に比較するために標準時数に補正をかけると、「ゆとり教育」を含めて1日の授業時数は増え続けていた
――「カリキュラム・オーバーロード」の実態を明らかにする研究に取り組まれたきっかけを教えてください。
もう10年ほど前のことになりますが、「子どもたちがなかなか学校から学童に来ないし、来てもぐったりしている」という話を学童保育の指導員から聞きました。そのとき、子どもたちが疲れているのは、学校での教育課程(カリキュラム)に問題があるからではないか、と考えて研究を始めました。
――これまでもカリキュラム・オーバーロードについては、いろいろな研究者が研究してきているのではないですか。
はい。古くは数学者で教育学者の遠山啓さんが「肥大なカリキュラム」という言葉を使って、1960年代の過密すぎる教育課程を批判しています。その遠山さんの指摘に賛同する学校関係者は多くて、1970年代に入ると日本教職員組合(日教組)も委員会を立ち上げて研究しています。
――そうした中で、大森さんの研究の特徴はどこにあるのでしょうか。
カリキュラムの「標準時数」に着目したことです。2020年以降にも「カリキュラム・オーバーロード」という言葉を使った研究がありますが、多くが、増えすぎて子どもたちにも教員にも負担が大きくなった教科の内容についてのものです。遠山さんの「肥大なカリキュラム」というときのカリキュラムも、教科内容のことです。標準時数の歴史的な変遷と、その標準時数がもたらした実態についての研究は、私の知る限り、ほとんどありません。それを今回、私たちがやったことになります。