韓国で高まる反中国感情:中国人へのヘイトの実態

韓国で、中国人に対するヘイトクライムや差別的な言動が増加しているという深刻な問題が浮き彫りになっています。尹錫悦大統領の支持者集会などを中心に、中国や中国人を標的にした嫌がらせや暴力行為が報告されており、日常生活を送る中国系住民の不安が高まっています。

中国人留学生や労働者へのヘイトの実態

中国からの留学生や労働者たちは、街中で心ない言葉を浴びせられたり、身体的な危害を加えられるなどの被害に遭っています。例えば、ソウル漢南洞で言語交換をしていた中国人留学生Aさんは、大統領支持者集会の場で「ゴートゥーホーム」「チャンケ」などの暴言を浴びせられ、恐怖を感じて友人と共に駅まで逃げたという経験を語っています。飲食店で働く中国系のHさんは、客から出身地や政治的な質問をされ、恐怖を感じたと証言しています。

alt_textalt_text

憲法裁判所付近で、尹錫悦大統領の弾劾反対を訴える団体が集会を開いている様子。このような集会で、一部参加者による中国人へのヘイトスピーチが問題となっている。

オンライン上でのヘイトと脅迫

オンライン上でも、中国人に対するヘイトスピーチや脅迫が蔓延しています。YouTubeやX(旧Twitter)には、中国人への威嚇行為を映した動画が多数投稿されており、その内容の悪質さが問題視されています。また、ヘイトに異議を唱えた人々も、オンライン上で誹謗中傷や個人情報の暴露といった報復を受けているという深刻な状況も明らかになっています。

ヘイトの背景と専門家の見解

専門家の中には、THAAD配備問題や文化摩擦といった過去の出来事を背景に、中国に対する反感が醸成されてきたと指摘する声もあります。西江大学のイ・ウギョン教授は、近年、特定のイシューに対する反感を越え、中国人そのものを嫌悪する傾向が強まっていると警鐘を鳴らしています。このようなヘイトは、もはや理性の範囲を超えており、説得が難しい状況になっていると懸念を示しています。

対策の必要性と今後の課題

こうした状況を受け、帰在韓同胞総連合会は、中国系住民に対してデモへの参加を控えるよう呼びかけています。また、弁護士や人権団体は、ヘイトクライムや差別を根絶するための対策の必要性を訴えています。

ヘイトスピーチや差別は、人権を侵害する重大な問題です。多文化共生社会の実現に向けて、政府や市民一人ひとりが問題の深刻さを認識し、具体的な対策を講じていくことが求められています。