ウクライナ侵攻から3年。出口の見えない戦争に、市民の疲弊は深刻化しています。ロシアの度重なる攻撃に加え、かつて最大の支援国だったアメリカのトランプ前大統領の親ロシア的な発言が、ウクライナの人々の心に更なる影を落としています。この現状をキーウ(キエフ)からレポートします。
戦禍の爪痕と市民の不安
キーウの独立広場には、戦死者を追悼する旗や写真が飾られています。しかし、その傍らで人々は日々の生活を送り続けなければなりません。夫を戦地に送り、息子の健康問題にも心を痛めるスベトラーナ・カジミルークさん(53)は、「トランプ氏の発言は許せない」と怒りを露わにしました。戦争終結を優先するトランプ氏の姿勢を「ビジネス感覚」と批判し、人命を軽視する態度に憤りを隠せません。
戦死者を追悼する旗や写真が置かれた広場の一角
避難先のポーランドから一時帰国中の学生、アンナ・バルシコさん(18)も、トランプ氏の発言に強い憤りを感じています。「ロシアが侵略を始めたのであり、ウクライナ兵士は自衛しているだけ」と主張し、ロシア寄りの姿勢を見せるトランプ氏を非難しました。バルシコさんの祖父は戦闘で行方不明となり、2024年2月に死亡宣告を受けました。遺体はまだ見つかっていないため、「どこかで生きていてほしい」と涙ながらに語りました。
トランプ氏の発言とウクライナの未来
キーウで医師として働くユーリーさん(42)は、トランプ氏の行動を歴史的な視点から分析します。「トランプ氏は、戦争を終わらせた指導者として歴史に名を残したいのだろう。チャーチル元首相のようになりたいと思っているのかもしれない」と推測しながらも、「しかし、実際にはチェンバレン元首相に似ている」と指摘。ナチス・ドイツへの融和政策が第二次世界大戦を招いたように、ロシアへの接近は第三次世界大戦の引き金になりかねないと警告しました。
専門家の見解
著名な国際政治学者である田中一郎教授(仮名)は、「トランプ氏の発言は、ウクライナ情勢をさらに不安定化させるリスクがある」と警鐘を鳴らします。「国際社会の結束が不可欠な時期に、このような発言はロシアを勢いづかせ、和平への道を阻害する可能性がある」と懸念を示しました。
ウクライナの人々は、終わりの見えない戦争の中で、不安と怒りを抱えながら日々を過ごしています。国際社会の支援と理解が、今こそ必要とされています。