タスマニア島で「幻の深海魚」と呼ばれるリュウグウノツカイが、極めて良好な状態で海岸に打ち上げられているのが発見されました。この貴重な発見に対し、専門家からも驚きの声が上がっています。「このような光景はめったに見られるものではない」と指摘されています。この出来事は、オーストラリアのタスマニア島、特に西岸のオーシャンビーチで起こりました。
タスマニア島のオーシャンビーチ。この海岸でリュウグウノツカイが発見された。
幻の深海魚、海岸への漂着
発見は6月2日、タスマニア島西岸のオーシャンビーチでの出来事でした。ビーチで犬の散歩をしていたロバートソンさんが発見しました。彼は豪ABCテレビに対し、当初は上空を飛ぶウミワシを見ていたところ、珍しく下降してきたことに気づいたと話しています。「ウミワシが浜辺に降りるなんてめったにないのに」と、その意外な行動に目を奪われたそうです。
その時、太陽の光に反射して「銀色の細長い線」が輝いているのを見つけました。近づくと、魚の「頭部の美しい色合いと模様」に魅了されたといいます。
ロバートソンさんは、この魚が何か「普通ではない、不思議なもの」だと直感したと、英ガーディアン紙に語っています。魚の正体を特定するため、タスマニアの自然にまつわる地元のFacebookグループに写真を投稿したところ、リュウグウノツカイであることが判明しました。打ち上げられた個体は胴体に若干の傷があるものの、生存時に近い状態を保っていたとのことです。
専門家が語る漂着の稀少性
タスマニア大学の海洋生態学者であるネヴィル・バレット氏は、ABCテレビの取材に対し、リュウグウノツカイが海岸に打ち上げられるのは「非常に稀なこと」であり、「報告もこれまでにほとんどない」と述べました。彼はこの発見を「本当に偶然で幸運な出来事」と表現しています。
バレット氏によると、リュウグウノツカイは一般的に漁船で捕獲されるような種類ではなく、人間がスキューバダイビングなどで潜るような浅い場所には生息していません。「時折、病気になると、何らかの理由で水面に浮上することがあるようです」と、漂着の可能性のある理由に言及しました。彼は続けて、「海中には間違いなく多くの個体が存在しますが、彼らは人間の目に触れることなく生きて死んでいくのです」と、その生態の神秘性を語りました。
リュウグウノツカイの知られざる生態
英ガーディアン紙の報道によれば、リュウグウノツカイは主に水深150メートルから500メートル程度の中層に生息しています。その体長は約8メートルにも達することがあり、重さは最大で400キログラムになる個体もいるとされています。
その細長い体と独特の形状から「幻の魚」や「深海の神秘」などと呼ばれ、めったに姿を見せないため、生態にはまだ多くの謎が残されています。今回のタスマニア島での発見は、そのような知られざる深海生物の姿を間近で観察できる極めて珍しい機会となりました。
タスマニア島でのリュウグウノツカイの発見は、その稀少性と状態の良さから、海洋生物学的に非常に価値のある出来事と言えます。深海に生きるこの神秘的な魚が、なぜ海岸に打ち上げられたのか、その全容は未だ明らかではありませんが、今回の発見は、普段私たちの目に触れることのない深海の生物相について、新たな知見をもたらす貴重な機会となりました。今後、この個体の調査によって、さらに多くの情報が得られることが期待されます。
参照:
- 豪ABCテレビ
- 英ガーディアン紙
- BuzzFeed Japan
- タスマニア大学