一般家庭出身の歌舞伎の“星” 中村梅丸が初代中村莟玉に





養父となった中村梅玉の羽織を着て、取材に応じる中村莟玉

 白塗りの化粧をすると、端正な素顔の美しさが一層引き立つ歌舞伎俳優、中村莟玉(かんぎょく)(23)。1日開幕した歌舞伎座(東京都中央区)の「吉例顔見世大歌舞伎」で、15年名乗った「中村梅丸」から「初代中村莟玉」に改名し、その披露の舞台に立っている。

 一般家庭に生まれ、幼い頃、親に連れられて見た歌舞伎に魅了され、7歳で中村梅玉(ばいぎょく)に入門。美形の女形として、近年は新作歌舞伎「NARUTO」のヒロイン、春野サクラにも抜擢(ばってき)。その可憐さが評判を呼んだ。今回の改名に合わせ梅玉の養子にもなった。

 人間国宝で、今年の高松宮殿下記念世界文化賞受賞者の坂東玉三郎(69)や、片岡愛之助(47)も一般家庭の出身で、素質を見込まれ幹部俳優の養子になって精進し、実力で歌舞伎俳優としての地位を築いた。莟玉にも、そんな道筋が期待される。

 「まさか15年前、今のようになるとは思ってもみませんでした。ただ歌舞伎俳優という進路にこれまで、迷ったことはないです」

 莟玉の名は、梅玉の養父で昭和から平成にかけての名女形、六代目中村歌右衛門(1917~2001年)が、自主公演を「莟会(つぼみかい)」の名で行ったことにちなむ。期待の大きさは、改名披露狂言で梅玉の当たり役「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき) 菊畑」の虎蔵実は源牛若丸を演じることにも表れている。若き日の源義経役で、品の良さや優美さが求められる。人形浄瑠璃から歌舞伎になった古典作品ゆえ、義太夫に乗って梅玉演じる鬼一とせりふの応酬があり、それが一つの見どころだ。

 「僕は師匠(梅玉)の演じる二枚目が大好きで、中でも虎蔵はぜひ、演じてみたいお役でした。披露狂言を聞き驚きましたが、教わる幸せを感じます」

 梅丸時代は、女形のイメージが強かったが、今回のような立役(男役)にも憧れている。「欲張りなのでしょうが、自分で(可能性を)たってしまうのはもったいない。受けいれていただけるなら、今後も勉強していきたい」

 世襲のイメージが強い伝統芸能の世界だが、莟玉は一般家庭出身者の“星”として「菊畑」の劇中、改名にあたり決意を口上で述べている。熱意と努力で自ら道を切り開いてきた若手の門出に、客席からも祝福の拍手が送られている。

 公演は25日まで。問い合わせはチケットホン松竹0570・000・489。(飯塚友子)



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