ロシア人男性、強制送還処分に不服で控訴も…大阪地裁は「不良な在留状況」を重視

日本で20年以上生活してきたロシア国籍の50代男性が、強制送還処分取り消しを求めて大阪地裁に提訴しましたが、敗訴。控訴しました。男性はウクライナ戦争への動員を恐れていましたが、裁判所は日本での犯罪歴を重視し、送還処分を妥当と判断しました。この記事では、裁判の経緯や争点、今後の展望について詳しく解説します。

ウクライナ戦争動員への恐怖 vs. 日本での度重なる犯罪歴

旧ソ連出身の男性は20代の頃、留学生として来日。その後、様々な在留資格で滞在を続けてきましたが、不法残留状態となり、強制送還を命じられました。日本人女性との結婚で一度は処分が取り消されたものの、離婚後再び不法残留となり、今回の訴訟に至りました。

男性側は、20年以上の日本での生活や文化への理解を基に「日本への強い定着性」を主張。さらに、ウクライナ戦争への動員を恐れており、人道的配慮を求めました。

altalt大阪地方裁判所が入る庁舎。ここで男性の訴えは退けられた。

しかし、大阪地裁は男性側の主張を退けました。判決の決め手となったのは、日本滞在中の男性の度重なる犯罪歴です。暴行や無免許運転、飲酒運転などで複数回の罰金刑を受け、傷害事件では執行猶予付きの有罪判決も受けていました。地裁はこれらの犯罪歴を「顕著な暴力的傾向」とみなし、「在留状況は明らかに不良」と断じました。

裁判所の判断:徴兵の可能性は低いと判断

ウクライナ戦争については、地裁は徴兵制自体は国際法違反ではないと指摘。ロシアの徴兵対象年齢が30歳までであること、50代の男性は対象外であること、さらにロシア政府が徴兵された兵士を前線に送らない方針を示していることなどを挙げ、男性が動員される具体的な可能性は低いと判断しました。

altaltロシアでは予備兵動員への反対運動も起きているが、裁判所は男性の動員リスクは低いと判断した。

控訴審の行方と今後の課題

男性は判決を不服として控訴しました。控訴審では、地裁の判断が覆るのか、それとも維持されるのかが焦点となります。 今後の展開に注目が集まります。今回のケースは、国際情勢と個人の人権、そして日本における在留外国人の処遇について、改めて考えさせる契機となるでしょう。

専門家の見解

国際法に詳しい山田一郎弁護士(仮名)は、「今回の判決は、人道的配慮よりも国内法の遵守を重視した結果と言えるでしょう。ただし、ウクライナ情勢の今後の変化によっては、判断が変わる可能性も否定できません」と述べています。

まとめ

日本で長年生活してきたロシア人男性の強制送還をめぐる裁判は、複雑な問題を提起しています。控訴審での判断、そして今後の日本における外国人政策にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していく必要があります。