近年、性犯罪に関する裁判で、高裁判決への批判や署名活動など、社会の反応が大きくなっています。特に滋賀医科大学事件の逆転無罪判決は、大きな波紋を呼びました。この状況を受け、袴田事件の弁護団の一人である戸舘圭之弁護士に、刑事裁判の大原則と性犯罪裁判の現状について伺いました。
刑事裁判の大原則「疑わしきは被告人の利益に」とは?
戸舘弁護士は、刑事裁判は国家権力による処罰を決めるプロジェクトであり、無実の人を罰しないために「疑わしきは被告人の利益に」という大原則が重要だと強調します。袴田事件の弁護経験から、この原則の大切さを痛感したと語ります。
alt 袴田事件の再審開始決定を伝える新聞記事
近年、一部の犯罪、特に性犯罪において、この原則が軽視される傾向があると戸舘弁護士は危惧しています。滋賀医科大学事件のように、高裁判決への批判や署名活動が活発化し、司法の判断に影響を与えかねない状況となっています。
性犯罪裁判の難しさ:感情と原則の狭間で
性犯罪は、被害者の苦痛や社会の不平等感と深く結びついているため、感情的な反応が大きくなりやすい側面があります。戸舘弁護士も被害者への寄り添いの重要性を認めつつも、刑事裁判では感情に左右されず、原則に基づいた判断が不可欠だと指摘します。
犯罪の有無、被害者の認定など、慎重な検討が必要であり、たとえ深刻な事件であっても、大原則を無視することは許されません。
厳罰化と人権:性犯罪撲滅への道筋
性犯罪の厳罰化を求める声が高まる中、戸舘弁護士は、厳罰化だけで本当に性犯罪がなくなるのか、人権の観点からも疑問を呈しています。性暴力撲滅と不平等の改善のためには、刑罰の強化だけでなく、社会全体の意識改革や被害者支援の充実など、多角的なアプローチが求められます。
司法関係者の中には、近年の性犯罪裁判を取り巻く状況を憂慮する声も上がっています。性犯罪の根絶を目指すためには、司法の独立性と公正性を守りつつ、被害者保護と被告人の権利保障のバランスを図ることが重要です。
まとめ:司法の公正さを守るために
滋賀医科大学事件は、刑事裁判の大原則と社会の反応について改めて考えさせる契機となりました。感情論に流されず、司法の公正さを守るためには、「疑わしきは被告人の利益に」という原則を堅持することが重要です。 袴田事件のように、冤罪を防ぎ、真実に基づいた判決を下すためにも、冷静な議論と社会全体の理解が必要です。