高市首相が台湾有事における集団的自衛権の行使可能性に言及し、中国政府が反発を強める中、日本の人気タレントたちが相次いで中国の「一つの中国原則」を支持する声明を投稿し、波紋を呼んでいます。この動きは、日中関係の冷え込みと、中国での活動を主軸とする芸能人たちの複雑な立場を浮き彫りにしています。
「一つの中国原則」とは何か
「一つの中国原則」とは、中国が主張する政策的立場であり、正統な「中国」は一つのみ存在し、中国と台湾は不可分な国家として統一されなければならないというものです。これは、中華人民共和国が長年主張してきた「台湾は中国の一部である」という考え方の根幹をなします。
人気タレントによる相次ぐ表明
11月18日、中国で絶大な人気を誇る歌手のメイリア(旧芸名・水橋舞)が、中国のSNS「Weibo」に「中国は私にとって第二の故郷であり、私は永遠に一つの中国を支持する」と投稿しました。彼女はさらに、「中国の友人たちは皆私が大切に思う家族」「中国を愛している」とも綴っています。
Weiboで「一つの中国」支持を表明する歌手メイリア
これに続き、中国での活動を主軸とし、日本人でWeiboの総フォロワー数No.1を誇る俳優HAOGO(浩歌、ハオゴー)氏、旧芸名・矢野浩二氏も同様の声明を発表。「私は一つの中国を永遠に支持し、永遠に愛する」「中国は私の第二の故郷」と、中国支持の姿勢を表明しました。浩歌氏は、日本国内でもNHK大河ドラマ『光る君へ』やテレビ朝日系『警視庁 捜査一課長』などへの出演で知られています。
芸能人の「踏み絵」:背景と世間の声
これらの表明に対し、X(旧Twitter)上では「中国で生きる外国人にとって、忠誠を誓うことは命に関わる」「必死になるのは仕方ない」といった理解を示す声が多く上がっています。これは、香港や台湾の芸能人が過去に同様の政治的声明を余儀なくされた構図と酷似しているとの指摘もあります。中国の芸能界では、政治的な問題に対する姿勢が極めて厳しく問われることで知られています。
中国で最も有名な日本人俳優とされる浩歌氏は、2000年に中国ドラマでブレイク後、人気俳優として活躍していました。しかし、2012年9月に日本政府が尖閣諸島を国有化すると、中国各地で巻き起こった反日デモの影響により、出演予定だったテレビ番組や契約済みのドラマを全て降板させられた経験があります。浩歌氏は、「日中が同じアジアの仲間として、嫌いでも仲良くなるしかない」としつつ、日本から「中国に媚びを売っている」といった批判を受けることに対しても、「そんなつもりは一切ない。両国の橋渡し役になれれば」と語っています。
日中関係の冷え込みと芸能界の板挟み
高市首相による“存立危機事態”認識の発言後、中国外務省は日本への渡航自粛を呼びかけるなど、日中関係は急速に冷え込んでいます。このような状況下での「一つの中国原則」支持声明は、まさに芸能人生をかけた「踏み絵」と評されるものです。日中両国で活動を展開するタレントにとって、こうした声明を出すことは避けられない選択となっているのが現状です。政治的信条と芸能活動を切り離すことが難しい、という現実が改めて浮き彫りになっています。





