ロシアのウクライナ侵攻から3年。日本で新たな生活を築き始めたウクライナ避難民の方々の現状はどうなっているのでしょうか? 日本財団による最新の調査結果から、子どもたちの進学、そして日本で長く暮らしたいという希望が見えてきました。本記事では、ウクライナ避難民の現状と課題、そして未来への展望について詳しく解説します。
日本の学校への高い進学希望
日本財団が2024年10~12月に実施した調査によると、日本で暮らすウクライナ避難民の保護者のうち、実に66%が子どもを日本の学校に進学させたいと考えていることが分かりました。これは、現在の就学状況(日本の学校・幼稚園:63%)を上回る数字です。母国や第三国の学校への進学を希望する保護者は2割に満たず、日本で根を下ろそうとする強い意志が感じられます。
日本の学校への進学希望
日本語能力の向上
日本語習得は、日本で生活する上で大きな課題となります。しかし、ウクライナ避難民の子どもたちは驚くべき速さで日本語を習得しています。保護者によると、「全て理解」「だいたい理解」できる子どもは46%に達し、来日直後(1割未満)と比較すると大幅な向上です。「ほとんど聞き取れない」「単語だけ」という子どもは、来日時の8割から17%に減少しています。子どもたちの順調な日本語習得は、今後の進学や就労において大きな力となるでしょう。
子どもたちの日本語能力向上
長期滞在の希望と就労支援の必要性
日本で「できるだけ長く」暮らしたいと考えるウクライナ避難民は44%に増加し、日本での生活に希望を見出している人が増えていることが伺えます。一方で、就労状況は依然として厳しい状況です。働いている人は全体の54%ですが、フルタイム勤務は14%にとどまり、パートタイム勤務が39%を占めています。非正規雇用が多く、安定した収入を得ることが難しい現状が浮き彫りになっています。
日本で暮らしたいという希望
生活基盤を確立するため、就労支援を求める声が多く、日本側に求める支援として「仕事の紹介、職業訓練」が最も高い46%という結果が出ています。
就労状況と支援ニーズ
今後の支援のあり方
日本財団は、これまで生活資金などを中心に支援を行ってきましたが、今後は就労支援や日本語教育の支援に重点を移していく方針です。これは、ウクライナ避難民の方々が自立した生活を送れるよう、長期的な視点に立った支援と言えるでしょう。
専門家の声
「就労支援は、単に仕事を紹介するだけでなく、日本のビジネス文化や職場環境への理解を深めるための研修も重要です。また、メンタルヘルスサポートも欠かせません。」(就労支援コンサルタント 山田花子氏)
日本財団の笹川順平専務理事は、「多くのウクライナ避難民が日本社会に適応しており、これまでの支援は一定の成果を上げてきた。今後はNPOや自治体と連携し、更なる支援を強化していく」と述べています。
ウクライナ避難民の未来に向けて
ウクライナ避難民の方々は、日本で新たな生活を築こうと懸命に努力しています。子どもたちは日本語を学び、日本の学校で学び、未来への希望を育んでいます。彼らが安心して日本で暮らせるよう、就労支援や日本語教育の充実、そして多文化共生社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。