受験シーズンが近づくと、多くの親御さんが子どもの進路、特に高校選びに頭を悩ませます。偏差値の高い学校であればあるほど良いと考えてしまいがちですが、本当にそうでしょうか?この記事では、教育経済学者の中室牧子氏の著書『科学的根拠(エビデンス)で子育て』を参考に、偏差値以外の視点から、子どもの将来にとって最適な学校選びについて考えていきます。
偏差値が高い=良い学校?ピア効果の落とし穴
誰もが優秀な友人たちに囲まれた刺激的な環境で学びたいと願うもの。いわゆる「ピア効果(仲間からの良い影響)」を期待する声は多く聞かれます。しかし、中室氏によると、このピア効果は必ずしもプラスに働くとは限らないようです。フロリダ州の公立小中学校の研究では、もともと学力の高い子供は周りのレベルが高いことでさらに伸びる一方、学力の低い子供は逆に周りのレベルの高さに圧倒され、学力が下がってしまうという結果が出ています。
フロリダ州の公立小中学校でのピア効果の研究結果を示す図
アムステルダム大学の研究でも、学力の低い学生同士でグループ学習をした方が、学力の高い学生と混合したグループよりも成績が向上したという結果が出ています。学力の低い学生だけのグループの方が、活発に意見交換し、授業にも積極的に参加していたそうです。つまり、子どもたちは「類は友を呼ぶ」ように、自分と似たレベルの友人と交流し、影響を受けやすい傾向があるのです。
「第一志望のビリ」は危険?深海魚現象とは
これらの研究結果を踏まえると、「第一志望のビリ」よりも「第二志望のトップ」の方が、その後の成績や進路に有利に働く可能性が高いと言えるでしょう。偏差値の高い学校に合格しても、周りのレベルが高すぎると、常に下位に沈み自信を失ってしまう「深海魚現象」に陥るリスクがあります。
教育コンサルタントの山田花子さん(仮名)は、「深海魚現象に陥った生徒は、自己肯定感が低下し、学習意欲を失ってしまうことが多い」と指摘します。「せっかく第一志望に合格しても、その後の学習に悪影響を及ぼしてしまうのは残念です。」
ギリシャの高校生のデータを用いた研究でも、学力テストで下位だった生徒は、次のテストでさらに成績を下げる傾向が見られました。これは、順位が低いことで自信を失い、努力することを諦めてしまうためと考えられます。
偏差値だけじゃない!多角的な視点で学校選びを
子どもを「深海魚」にしないためには、偏差値以外の視点も取り入れた学校選びが重要です。学校のカリキュラム、教育方針、部活動、課外活動など、多角的に情報を集め、子どもに合った学校かどうかをじっくり検討しましょう。
学校選びの際に考慮すべき要素を示す図
たとえ成績が振るわなくても、他の活動で活躍できれば、自己肯定感を維持することができます。子どもが笑顔で、自信を持って学校生活を送れることが大切です。偏差値にとらわれず、親子でじっくり話し合い、最適な学校を選んでいきましょう。