セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、創業家から提案されていた経営陣による自社株買収(MBO)を断念する方向で最終調整に入っていることが分かりました。総額8兆~9兆円規模とされるMBOの実現には巨額の資金調達が必要でしたが、有力な出資企業候補だった伊藤忠商事が参画を断念したことが大きな痛手となり、資金計画が暗礁に乗り上げた模様です。
伊藤忠商事の撤退でMBO頓挫、セブン&アイHDの今後
セブン&アイHDのMBOは、昨年8月にカナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案に対抗する形で、創業家側から提案されました。セブン&アイHD側はクシュタールの買収提案には難色を示しており、MBOによる経営の独立性を維持する狙いがありました。しかし、伊藤忠商事の出資断念により、MBO実現の道は事実上閉ざされた形となります。
セブン&アイHD本社ビル
関係者によると、セブン&アイHDは社外取締役で構成する特別委員会でMBO案を議論し、その後の取締役会で正式に断念を決定する見通しです。伊藤忠商事はすでにセブン&アイHD側に出資断念の意向を伝えており、MBOに必要な資金調達の目処が立たなくなっています。
巨額資金調達の壁、MBO実現ならず
創業家は伊藤忠商事のほか、メガバンクや米投資ファンドなどにも融資・出資を打診していました。しかし、1兆円規模の出資を検討していた伊藤忠商事が離脱したことで、資金調達の枠組みを構築することが困難になったとみられます。
MBO断念後のセブン&アイHDの戦略は?
MBOが頓挫したことで、セブン&アイHDは今後、自力での企業価値向上を目指していくことになります。コンビニ事業の強化、デジタル戦略の推進、新規事業の開拓など、様々な施策が検討されるでしょう。 食料品スーパーマーケット事業の見直しや海外展開の加速なども視野に入れ、新たな成長戦略を策定する必要に迫られています。業界関係者からは、コンビニ業界の競争激化や消費者の変化に対応できるかが今後の鍵を握るとの見方も出ています。例えば、フードデリバリーサービスとの連携強化や、プライベートブランド商品の拡充などが挙げられます。 セブン&アイHDがどのように新たな道を切り開いていくのか、注目が集まります。
例えば、小売業界に精通したA氏(仮名)は、「セブン&アイHDは、MBO断念を契機に、従来の枠にとらわれない大胆な改革が必要だ。デジタル化の加速や異業種との連携など、新たなビジネスモデルの構築が求められるだろう」と指摘しています。