郵便局。誰もが利用する身近な存在だからこそ、その内情はあまり知られていません。地域に根差した郵便局には、まるで政治家のように権力を持つ人物が存在し、不正が横行しているという現実があります。今回は、西日本新聞記者の宮崎拓朗氏の著書『ブラック郵便局』を基に、権力構造と不正に立ち向かう局長たちの勇気ある闘いをご紹介します。
郵便局の権力構造:表と裏の顔
郵便局には、会社としての組織(表の部会)と、郵便局長会という組織(裏の部会)が存在します。表の部会は、営業目標の達成や不祥事対策などを行い、裏の部会は選挙協力や地域活動などを行います。同じ地域で活動する局長たちは、濃密な人間関係を築きながら、共に仕事を進めていきます。
福岡県直方市の風景
しかし、この密接な関係が、時に不正を見逃す温床となることもあります。不正を働く局長をかばい、組織全体を守るために見て見ぬふりをする。そんな構図が生まれてしまうのです。
筑豊地方の小さな郵便局で起きた事件
2018年秋、福岡県筑豊地方の直方市で、ある問題が明るみになりました。直方部会の局長6人は、同じ部会の局長による現金検査の怠慢や、部下への暴言・暴力などの問題行動に関する相談を受けていました。
沈黙を破る勇気
6人は、この問題を放置すれば部会の運営に支障をきたすと考え、会社に報告することを決意します。しかし、地区連絡会のトップである地区統括局長が、問題を起こしている局長の父親であるN氏だったため、報告は容易ではありませんでした。
N氏は、地区局長会の会長も務めており、社内と局長会の両方で強い権力を持っていました。まるで政治家のように派閥を作り、選挙活動での実績を武器に権力の座に上り詰めた人物でした。
郵便局の窓口
正義のための闘い
N氏の権力に屈することなく、6人の局長たちは真実を明らかにしようと立ち上がります。しかし、その道のりは険しく、執拗な恫喝を受け、精神的に追い詰められていくことになります。
権力と不正に立ち向かう勇気
『ブラック郵便局』では、このような不正に立ち向かう局長たちの葛藤や苦悩が描かれています。 巨大な組織の中で、不正を告発することは大きなリスクを伴います。それでも、正義のために声を上げた彼らの勇気は、私たちに多くのことを考えさせてくれます。
郵便局という身近な存在の裏側で繰り広げられる、権力と不正にまつわる物語。真実を明らかにするために闘う人々の勇気は、私たちに希望を与えてくれます。