美智子さまが長年の夢を叶えた、書店での静かなひととき。作家の故・曽野綾子氏が仕掛け人となった心温まるエピソードを、曽野氏自身のエッセイを元に紐解いていきます。
美智子さまのささやかな願い
聖心女子大学の後輩でもある美智子さまとの交流の中で、曽野氏は驚くべき事実を知ることになります。それは、美智子さまがご結婚以来、ゆっくりと書店を散策したことがないということでした。常に欲しい本はあるものの、書店で偶然出会う素敵な本との出会いもまた、読書の楽しみの一つ。美智子さまの「本屋さんをゆっくり歩いてみたい」というささやかな願いを叶えるため、曽野氏は特別な“作戦”を立案します。
美智子さまと上皇さま 宮内庁提供
極秘作戦:書店訪問計画
2015年、曽野氏による周到な計画がスタートしました。皇居からのアクセス、静かな環境、そして適切な広さを持つ書店選びが重要となります。熟慮の末、渋谷の東急百貨店本店にあるジュンク堂書店に白羽の矢が立ちました。地下駐車場から書店への直通エレベーターの存在も、人目を避ける上で大きなメリットでした。
特別扱いは不要:開店と同時に入店
美智子さまは、警備や入場制限といった特別扱いを望まれませんでした。そこで、開店と同時に入店するという計画が立てられました。開店直後であれば、人通りも少なく、静かに書店を巡ることができると考えたのです。
ジュンク堂書店での貴重な時間
計画通り、美智子さまは開店と同時にジュンク堂書店へ。一般客に紛れ、静かに書棚を巡り、思い思いの時間を過ごされたそうです。 読書家として知られる美智子さまにとって、この書店訪問はどれほど特別な時間だったでしょうか。
美智子さまが訪れたジュンク堂書店
心温まるエピソード
美智子さまの書店訪問は、単なる買い物ではなく、読書への深い愛情と、日常のささやかな喜びを大切にするお人柄を象徴するエピソードと言えるでしょう。 作家・曽野綾子氏の温かい配慮と、美智子さまの控えめな姿勢が重なり合った、心温まる物語です。