大阪の水道インフラの老朽化が深刻な問題となっています。道路陥没事故や断水など、老朽化した水道管に起因するトラブルが相次いで発生しており、南海トラフ巨大地震発生時のリスクも懸念されています。この記事では、水道管老朽化の現状、その危険性、そして対策について詳しく解説します。
老朽化の現状:専門家の指摘とデータ
水道管の耐用年数は40~50年と言われています。大阪市では、多くの水道管が耐用年数を超えて使用され続けており、内部には水垢や不純物が堆積し、腐食が進んでいるケースも少なくありません。配水管整備事業を営むA氏は、40年前後使用された水道管の内部写真を見せながら、腐食の深刻さを訴えています。
40年前後使用された水道管の内部。水垢などが堆積し、腐食が進んでいる
大阪市水道局の元職員B氏によると、水道管更新のペースが鈍化していることも問題です。理想的には年間70~80kmのペースで新しい水道管を布設すべきですが、近年は40~60km程度に落ち込んでいます。「令和5年度大阪市水道事業会計決算書」では、総布設距離は約45kmと半分近くまで減少しています。
さらに、水道管の布設工事の件数自体も減少傾向にあります。A氏によると、2019年度には90件ほどあった工事が、2023年度には62件にまで減少しているとのこと。業者や水道局職員の間では、大阪・関西万博の工事に予算が回されているためではないかと噂されています。
陥没事故のリスク:軟弱地盤の大阪、地震への備えは?
埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道管の破損と漏水が原因とみられています。だいち災害リスク研究所の横山芳春所長は、地盤が軟弱な地域では下水道管の破損により土砂が水道管に流れ込み、道路の下に空洞ができやすいと指摘しています。大阪は埋め立て地が多く、地盤が軟弱な地域が多いため、水道管の老朽化リスクに特に注意が必要と言えるでしょう。
埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故現場
南海トラフ地震への懸念:火災拡大の危険性
阪神・淡路大震災では、水道管の破損により消火活動が遅れ、被害が拡大しました。A氏は、南海トラフ地震が発生した場合、老朽化した水道管が破損し、消火活動が困難になる可能性を指摘し、大阪が火の海になる危険性を警告しています。
大阪市水道局の見解と今後の対策
大阪市水道局工務部は、老朽化が最も進んでいる水道管の更新を最優先で進めていると説明しています。口径の大きい基幹管路については更新ペースアップを図り、口径の小さい配水支管については年平均約45kmの更新ペースを設定しているとのこと。今後については、合計で年平均約53kmの管路更新を予定しているとしています。
しかし、A氏は53kmの更新では不十分だと反論しています。専門家や現場の声を踏まえ、より積極的な対策が求められると言えるでしょう。
まとめ:早急な対策が不可欠
大阪の水道管老朽化問題は、市民生活の安全に関わる重大な課題です。南海トラフ地震などの大規模災害発生時のリスクを軽減するためにも、行政は早急かつ抜本的な対策を講じる必要があります。