バブル崩壊後の就職氷河期を経験した世代にとって、安定した公務員という職業は希望の光でした。しかし、現代の教育費高騰は、彼らの子育てにも暗い影を落としています。今回は、公務員として働く47歳のAさんの事例を通して、経済的困難が子ども世代に連鎖する現状、そして教育費の高騰という現代社会の課題について深く掘り下げていきます。
氷河期を乗り越えた公務員、それでも息子への罪悪感
Aさんは近畿地方で育ち、高校進学と同時にバブル崩壊を経験しました。女手一つで育ててくれた母親は、不況の煽りを受けながらもAさんの大学進学を強く願っていました。「就職の選択肢を広げるため」—それは、母親の切実な願いでした。 Aさんも母親の苦労を理解し、懸命に勉強に励み、地元の国立大学に合格。就職氷河期という厳しい時代でも安定した収入を得られる公務員を目指し、市役所に就職を果たしました。
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月収41万円、それでも国立大は遠い夢?
現在、Aさんは高校1年生の息子を持つ父親。手取り月収41万円という収入は決して少なくありません。しかし、大学進学にかかる費用を考えると、Aさんは不安を隠しきれません。息子にも国立大学を目指してほしいと思っていますが、今の教育費の高騰を考えると、容易ではありません。Aさんは息子に「父さんの収入じゃ無理だ…」と、苦しい胸の内を吐露しました。
教育費高騰の現実
アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏によると、近年、教育費の高騰は深刻な社会問題となっています。大学進学にかかる費用は、授業料だけでなく、教材費、生活費、そして都市部への進学となると住居費なども加わり、大きな負担となります。特に国立大学であっても、地方から都市部への進学となると、生活費を含めた総額は高額になります。 かつてAさんが奨学金580万円を借りて大学に進学した時代とは状況が異なり、子ども世代への経済的負担は増大しています。
就職氷河期世代への影響
就職氷河期世代は、非正規雇用や低賃金という厳しい状況を経験し、経済的な基盤が脆弱なまま子育て世代を迎えています。教育費の高騰は、彼らにとって大きな負担となり、子ども世代への教育投資を躊躇させる要因となっています。これは、教育格差の拡大、ひいては社会全体の格差拡大につながる可能性があります。
未来への希望を繋ぐために
Aさんの事例は、現代社会における教育費高騰の問題点を浮き彫りにしています。氷河期世代が苦労して掴んだ安定も、子ども世代の未来を保障するには十分ではないという現実。教育は未来への投資であり、すべての子どもが平等に教育を受ける権利を持つべきです。教育費負担の軽減や奨学金制度の充実など、社会全体でこの問題に取り組む必要があります。