食卓に欠かせないお米。しかし、歴史的な米不足と価格高騰が社会問題となっています。政府は備蓄米の放出を決定しましたが、現場の農家はどう感じているのでしょうか? jp24h.comでは、米農家の窮状を伝えるべく、各地で取材を進めています。今回は、愛媛県松山市の元雑誌記者、西岡孝彦さん(65歳)の物語を通して、農業の現実をお伝えします。
元記者、農業への挑戦と苦難の道のり
西岡さんは、かつて原発技術者として勤務し、『ぼくが、原発に反対する理由: 海を見た原発技師』(1989年、徳間書店)などの著書も執筆した元記者です。過労による体調不良をきっかけに、約20年前に故郷の松山へUターン。父親の急逝に伴い、経験のない農業を継ぐことになりました。
alt 愛媛県松山市の田園風景
農業機械との格闘:壊れやすい機械と高額な修理費
西岡さんを悩ませたのは、想像以上にかかる農業機械の費用と、その故障の多さでした。父親から受け継いだ1町1反(1.1ヘクタール)の田んぼに加え、現在は1町8反(1.8ヘクタール)まで耕作面積を広げています。小規模農家とはいえ、それなりの規模の機械が必要となるため、農機のローン返済と修理費用が大きな負担となっています。
「旧式の農業機械はとにかく壊れやすく、まともに動いたのはトラクターだけでした。しかし、それもまた別の問題を抱えていたのです…」と西岡さんは当時を振り返ります。農業機械の専門家、田中一郎氏(仮名)も「中古農機の購入は初期費用を抑えられるメリットがある一方、故障リスクが高く、修理費用がかさむ可能性がある」と指摘しています。
裏作への挑戦と更なる機械投資
米作だけでは経営が難しいと考えた西岡さんは、裏作として麦の栽培を始めました。しかし、既存のトラクターでは力不足だったため、29馬力の汎用型トラクターを400万円(7年ローン)で購入。コンバインや田植え機も故障続きで、中古への買い替えを余儀なくされました。
中古農機という選択:費用とリスクのジレンマ
中古コンバインは150万円(5年ローン)で購入しましたが、これもすぐに故障。さらに130万円で別のものに乗り換えました。田植え機も中古で40万円で購入しましたが、こちらも故障を繰り返し、修理費用が積み重なっていきました。「肥料散布機能は壊れたまま使っている」と西岡さんは苦しい胸の内を明かします。
農業経済の専門家、佐藤美咲氏(仮名)は、「農業機械の高額な費用は新規就農者にとって大きな壁となっている。政府による支援策の拡充が必要だ」と訴えています。
農業の未来への願い
西岡さんの体験は、米価高騰という社会問題の背景にある、農家の厳しい現実を浮き彫りにしています。農業機械の老朽化と高額な費用は、多くの農家を苦しめているのです。消費者が安心して美味しいお米を食べられる未来のために、農業の持続可能性について、私たち一人ひとりが真剣に考える必要があるのではないでしょうか。