JR東日本は今年7月より、利用者の利便性向上を目指し、駅に設置されている「指定席券売機」の機能強化を順次進めています。これには、これまで「わかりにくい」との声が多かったトップ画面の刷新に加え、新幹線や特急列車などの指定券・特急券の払い戻しが指定席券売機でも可能になるという大きな変更が含まれます。
さらに、運休や2時間以上の遅延が発生した場合の新幹線・特急列車の特急券の払い戻しも、窓口に並ぶことなく券売機で対応できるようになりました。また、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社は、2026年度以降に現在ばらばらになっているネット予約サイトの連携を開始すると発表。これらの取り組みは、「みどりの窓口」の削減を進めるJR各社が、その代替機能を指定席券売機に持たせることを強く意識している表れと言えるでしょう。
機能強化が進められるJR指定席券売機
機能強化されたはずの券売機、いまだ残る「払い戻し」の壁
しかし、大々的に宣伝されている機能強化にもかかわらず、指定席券売機の機能は未だ不完全な部分が多く、完全に「みどりの窓口」の役割を代替するには至っていないのが現状です。特に払い戻しに関する機能には、利用者が戸惑う点が少なくありません。
例えば、特急券の乗車変更は使用前であれば一度だけ可能であり、指定席券売機でもこの変更手続き自体は行えます。しかし、一度変更を行った切符は、なぜか指定席券売機では払い戻しができなくなってしまいます。変更は券売機で可能なのに、払い戻しには対応しないという中途半端な仕様は、利用者の利便性を損ねています。
株主優待券利用時の複雑な手続きと「話せる券売機」の限界
さらに、株主優待券を利用して購入した切符の取り扱いに関しては、依然として非常に複雑です。株主優待券で購入した切符の変更は、指定席券売機では一切行うことができません。この制限は、通常の指定席券売機だけでなく、「みどりの窓口」の機能を代替するとされる「話せる指定席券売機」でも同様です。
実際に筆者が「話せる指定席券売機」で試したところ、コールセンターのスタッフからも「券売機では変更できません」との回答がありました。結局、株主優待券を利用した切符の変更には、「みどりの窓口」へ行くしかありません。これは、窓口削減の方針と逆行する、利用者の手間を増やす結果となっています。
複雑な操作に戸惑う「話せる指定席券売機」利用者
混乱を招く二種類の券売機と駅員の把握不足
また、指定席券売機と「話せる指定席券売機」の間で、できることとできないことの機能差があることも混乱を招く一因です。例えば、「話せる指定席券売機」では、一度乗車変更を行った切符でも払い戻しが可能な場合がありますが、通常の指定席券売機では対応できません。
このようなシステム上の複雑さは、利用者だけでなく、駅員の側にも影響を与えています。システムが複雑すぎるため、駅員であっても何ができて何ができないのかを正確に把握しきれていないケースが見受けられます。これは、サービスの効率化を目指す上での大きな課題と言えるでしょう。
まとめ
JR各社が進める「みどりの窓口」削減と指定席券売機の機能強化は、デジタル化と効率化の時代の流れに沿った動きです。しかし、現状の機能では、払い戻しの制約、株主優待券利用時の複雑な手続き、そして異なる券売機間の機能差による混乱など、多くの課題が残されています。これらの不完全な点が解消され、より包括的かつ直感的なサービスが提供されるようになれば、真の意味で利用者の利便性が向上し、「みどりの窓口」を完全に代替する日が来るのかもしれません。JR各社には、さらなるシステム改善と利用者の声に耳を傾ける姿勢が求められます。





