日本全国で老朽化が進むインフラ。維持管理の必要性が叫ばれる中、長崎県では石木ダム建設計画が今もなお進行しています。1973年の着工から半世紀、当初26億円だった総事業費は420億円に膨れ上がり、完成予定も2032年と24年も遅延しています。果たして、このダムは本当に必要なのでしょうか? 本記事では、石木ダム建設問題の現状と、日本のインフラ整備における課題点について深く掘り下げていきます。
老朽化インフラの影に潜む巨額のダム建設費
埼玉県八潮市で起きた下水道管の破損事故。これは決して他人事ではありません。全国各地で老朽化したインフラが私たちの生活を脅かしています。そのような状況下で、巨額の費用を投じて新たなダムを建設することが本当に適切なのでしょうか? 維持管理に予算を集中すべきではないのでしょうか?
埼玉県八潮市で陥没した道路(写真:共同通信社)
形骸化した再評価制度:石木ダムの継続決定に見る問題点
石木ダム建設の継続は、2024年8月に行われた10回目の公共事業再評価に基づいています。しかし、この再評価プロセスには大きな疑問が残ります。長崎県は治水事業のみを検証し、利水については佐世保市に継続の意思を確認しただけでした。一方、佐世保市が利水事業の必要性について検討を始めたのは、県の再評価から5ヶ月も後のことでした。
このような順序で検討が行われたことについて、佐世保市水道局担当者は「県の評価がOKにならないと事業費も工期も固まらない。市の検討委はいわば付属機関」と説明しています。つまり、県と市は既に結論ありきで再評価を行っていたのです。四半世紀前に導入された公共事業の再評価制度は、形骸化していると言わざるを得ません。
専門家の声:透明性と客観性のある評価が必要
都市計画コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「住民の意見を真摯に受け止め、透明性と客観性のある評価を行うべきだ」と指摘しています。 巨額の税金が投入される公共事業において、このような不透明なプロセスは許されるべきではありません。
目的を失ったダム? 変化する社会情勢への対応
石木ダム建設計画は、当初工業用水の確保を目的としていました。しかし、計画立案から50年が経過し、社会情勢は大きく変化しています。当初想定されていた工業団地はハウステンボスへと姿を変え、佐世保市の人口も減少傾向にあります。
佐世保市の給水人口の推移
本当に必要なインフラとは? 未来を見据えた投資を
石木ダム建設問題を通して、私たちが考えるべきは、真に持続可能な社会を実現するために必要なインフラとは何かということです。老朽化対策への投資、新たな技術を活用した水資源管理など、未来を見据えた投資こそが、私たちの生活を守り、より良い未来へと繋がるのではないでしょうか。