少子化が深刻化する日本において、私立大学の約半数が定員割れに陥っている(日本私立学校振興・共済事業団「令和7〈2025〉年度私立大学・短期大学等入学志願動向」)。特に「女子大の危機」という報道は度々話題となり、京都ノートルダム女子大学が志願者数減少を理由に募集停止を発表したことは、全国に大きな衝撃を与えた。しかし、この「女子大の危機」という言説は、果たして女子大にのみ当てはまる真実なのだろうか? 本記事では、関東の女子大でいち早く改革に取り組み、好調を維持しているとされる昭和女子大学の松田忍氏と共立女子大学の渡辺篤氏、そしてジャーナリストの杉浦由美子氏による議論を基に、現代の大学入試動向と女子大の未来について深掘りする。
少子化による定員割れに直面する私立大学の現状を示すキャンパス風景
学生確保に苦戦するのは「女子大だけ」の問題なのか?
近年、「女子大は大変ですね」という声が大学関係者の間で聞かれるようになったと、共立女子大学の渡辺篤氏は語る。説明会では保護者から定員充足状況を尋ねられることも増え、以前には見られなかった傾向だという。ジャーナリストの杉浦由美子氏は「大学はどこも大変な時代」と指摘するが、この危機感は本当に女子大特有のものなのだろうか。
昭和女子大学の松田忍氏は、「もちろん安泰というわけではありませんが、それは共学の大学でも同じです」と現状を語る。むしろ、「大学に行くなら女子大」というかつての志向が薄れていることが本質的な変化だと分析する。かつては女子大のみを併願する受験生が多かったが、現在は共学の大学と女子大を併願するケースが主流となっている。共立女子大学でも同様に、合格辞退者の進学先を調べると、日東駒専や成成明獨國武といった共学の人気大学に進む学生が多いという。2025年においては、日本大学が進学先のトップだった。
受験生の意識変化:学部・カリキュラム重視の時代へ
松田氏は、現代の受験生は「共学か女子大か」という選択よりも、まず「何を学びたいか」という点を優先する傾向が強まっていると指摘する。例えば、経営学部志望の学生は共学の経営学部だけでなく、昭和女子大学のグローバルビジネス学部なども視野に入れて受験する。これは、かつて女子校のみを受験していた中学受験生が、現在ではグローバル教育に力を入れる共学校と女子校を併願するケースが増えている状況と酷似している。
渡辺氏もこの見解に同意し、「今の受験生は『どこの大学か』というよりも、何をやりたいかということを優先している」と述べる。女子大であること自体が敬遠されることを心配するよりも、受験生にとって魅力的な学部やカリキュラムを提供できているかが、学生確保の鍵となる時代へと変化しているのだ。実際に、昭和女子大学や共立女子大学は、経営系の学部や建築学部など、女子学生のニーズに応える形で多様な学部を早期に設置し、高い評価を得ている。これは、単に「女子大」という枠組みに囚われず、時代の変化と学生のニーズを捉えた改革が、生き残り、さらに発展するための不可欠な要素であることを示している。
まとめ
「女子大の危機」という報道が注目を集める中、実際には少子化による学生確保の課題は、女子大に限らず多くの私立大学が直面している共通の問題であることが浮き彫りとなった。現代の受験生は、大学の男女共学・女子大といった形態よりも、自身の学びたい分野や将来のキャリアに直結する学部・カリキュラムを重視する傾向にある。このような時代において、昭和女子大学や共立女子大学のように、学生のニーズを的確に捉え、経営系の学部や建築学部といった新しい学びの場を積極的に提供する女子大は、共学の大学とも遜色なく、むしろ強みを発揮している。女子大が持続的に発展するためには、「女子大であること」を強みとしつつ、常に社会の変化と学生の多様な学習意欲に応え続ける革新的な教育戦略が求められている。
参考文献
- 日本私立学校振興・共済事業団「令和7〈2025〉年度私立大学・短期大学等入学志願動向」
- 【写真】昭和女子大は大学通信調べの2025年の実就職率ランキングで全国9位だった
- Yahoo!ニュース (2024年10月20日). 「女子大の危機」は本当か? 好調な女子大の入試担当者とジャーナリストが語り合った. 東洋経済education × ICT. https://news.yahoo.co.jp/articles/43c220b46ed92e9d32916dc0119a8044e74dbb64