放送開始から100周年という節目を迎えた公共放送NHKが、満を持してネット配信サービス「NHK ONE」をスタートさせました。ラジオ、テレビに続く“第三の開局”として大きな期待が寄せられていましたが、サービス開始初日からシステムに不具合が発生し、利用者が大混乱に陥る事態が発生。局内からも懸念の声が上がっています。
サービス開始初日の混乱と視聴者の怒り
「一体全体どうなっている。いい加減にしろ!」――。ある地方のNHK放送局で、中高年の男性が怒号を響かせました。男性は9月1日に始まった新サービス「NHK ONE」への不満をぶちまけていたといいます。居合わせたNHK職員によると、この男性は朝から放送局の開館を待ち構え、新サービス開始に伴い設けられた視聴者向けサポートコーナーの担当職員に直接クレームを申し立てていました。
同様の怒りの声はSNS上でも爆発的に広がりました。
「ほんとふざけるな なんなんだNHKって こんなに不信感持ったことない gmailに認証コード届かない難民いっぱいいそうなのだが 」
「画面がフリーズしたり、入力画面に打ち込めなかったり、もうめちゃくちゃ」
「解約したろかな腹立つ」
といった不満が相次ぎ投稿され、NHKの新サービスに対する不信感が募る状況となりました。
NHKの新しいネット配信サービス「NHK ONE」のロゴイメージ。サービス開始初日にシステム障害が発生し、ユーザーがログインできない状況を背景に、その混乱を示唆している。
NHK幹部・アナウンサーによる異例の謝罪
こうした状況を受け、「NHK ONE」のプレゼンターを務める黒崎めぐみ理事が、1日に放送された「午後LIVEニュースーン」の中で深々と頭を下げて謝罪しました。さらに同日午後7時半からの「クローズアップ現代」でも、MCの桑子真帆アナウンサーが「原因は調査中です。ご不便をおかけして申し訳ございません」と謝罪の言葉を述べました。
その後、徐々に不具合は解消に向かったものの、翌日午後2時に放送されたニュース番組では、豊島実季アナウンサーが釈明に追われるという異例の事態が続きました。生放送番組で次々とエース級のアナウンサーらが謝罪に駆り出されるなど、現場は大混乱に陥っていたと報じられています。
システム障害の背景と「NHK ONE」の概要
前出の職員によれば、今回の新サービス「NHK ONE」は、テレビ・ラジオ番組の同時配信や見逃し・聞き逃し配信に加え、「NHKニュース・防災アプリ」などの各種アプリや「NHK NEWS WEB」といったウェブサイトを一元化・集約したものです。スマートフォンやパソコン、ネット接続可能なテレビなどから利用でき、従来のネットサービスは全て廃止となりました。
問題の根源は、約600万人もの登録者を抱える「NHKプラス」などの従来サービスが、9月30日をもって一斉に廃止されたことにありました。NHKは新サービスの利用にはアカウントの新規登録が必要であり、旧サービスの利用者も新たにアプリをインストールするなどの移行手続きを行うよう広報していましたが、移行期間が設けられなかったため、新サービス開始直後からアクセスが殺到。利用希望者がメールアドレスを登録すると、NHKから認証コードが送られてくる仕組みですが、肝心の認証コードが届かず、サービスを利用できない人が多発してしまったのです。
サービス開始の出鼻をくじかれたNHK
公共放送として鳴り物入りでスタートした「NHK ONE」ですが、初日から認証システムの不具合による大規模な混乱に見舞われ、利用者からの信頼を大きく損なう結果となりました。NHKにとって、サービス開始の出鼻をくじかれる散々な船出となってしまったと言えるでしょう。今後、迅速なシステム改善と利用者への丁寧な対応が求められます。