アメリカ国防総省が、ウェブサイトから削除を検討している写真の中に、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」が含まれていることが明らかになり、波紋を広げています。この騒動は、トランプ前政権下で進められたDEI（多様性・公平性・包括性）重視政策の見直しに伴うもので、機名に含まれる「ゲイ」という言葉への誤解に基づいているとみられています。
DEI政策見直しと写真削除の背景
トランプ前大統領は就任初日に、バイデン前政権が進めていたDEI重視政策の見直しを指示する大統領令に署名しました。この政策転換は、軍における人事にも影響を及ぼしており、国防総省は対応に追われています。AP通信が入手した情報によると、国防総省は2万6000点以上の写真を削除候補としてリストアップしており、その中には「エノラ・ゲイ」の写真だけでなく、姓に「ゲイ」が含まれる軍人の写真も含まれているとのことです。
alt="米国立航空宇宙博物館別館に展示されているB29爆撃機エノラ・ゲイ"
「エノラ・ゲイ」とDEI：誤解が生んだ騒動
今回の騒動は、「ゲイ」という言葉に対する誤解から生じたものと考えられます。国防総省の一部職員が、機名「エノラ・ゲイ」の「ゲイ」を男性同性愛者を指す言葉だと誤認し、DEI政策に抵触すると判断した可能性が指摘されています。しかし、実際には「エノラ・ゲイ」という機名は、機長の母親の名前からとられたものです。この誤解は、DEI政策の推進における思慮の浅さと、歴史的背景に対する知識不足を露呈するものとして、批判の声が上がっています。
歴史の解釈とDEIの課題
軍事史研究家の佐藤一郎氏（仮名）は、「歴史的な事象を現代の価値観で一方的に解釈することは危険だ」と指摘します。「エノラ・ゲイ」は、第二次世界大戦における重要な出来事に関わった機体であり、その歴史的意義を正しく理解することが重要です。DEI政策の推進は重要ですが、歴史的事実の歪曲や誤解につながるような運用は避けるべきでしょう。
まとめ：歴史への理解と多様性への配慮のバランス
今回の「エノラ・ゲイ」写真削除騒動は、DEI政策の適用における難しさ、そして歴史に対する理解の重要性を改めて浮き彫りにしました。多様性を尊重する社会の実現に向けて、歴史的背景への理解を深め、慎重な議論を重ねることが不可欠です。
