1歳児保育士配置基準見直し議論:経験年数重視は本当に保育の質向上につながるのか?

保育の現場で何が起きているのか。今、1歳児の保育士配置基準をめぐり、国会で熱い議論が交わされています。待機児童問題の解消や保育の質の向上が叫ばれる中、政府は令和7年度から1歳児に対する保育士の配置基準を「園児6人に1人」から「園児5人に1人」へと改善する方針を打ち出しました。一見、子どもたちにとって喜ばしいニュースに思えますが、その裏には複雑な事情が隠されているようです。

経験年数10年以上?保育士配置加算の要件に疑問の声

この配置基準改善に伴い、保育所への運営費が加算されることになっています。しかし、その加算には「施設・事業所の職員の平均経験年数が10年以上」という条件が付帯されているのです。この条件に対し、元保育士でもある立憲民主党の奥村議員は「筋が悪い」と強く批判しています。

現場の声:経験年数より人数増加を優先すべき

奥村議員は、1歳児は食事中に窒息するなどの事故リスクが高いことから、一刻も早い保育士の増員を求めています。しかし、政府が提示した加算条件は、保育士確保の政策に逆行するものであり、現場の混乱を招く可能性があると指摘。独自に保育関係者へのヒアリングを行い、緊急要請書を提出するなど、積極的に改善を求めています。

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政府の回答:質の向上・職場環境改善のための措置

一方、三原じゅん子こども政策担当大臣は、保育の質の向上、職場環境・処遇改善の観点から、一定の要件を満たす事業所への加算措置を進めていると説明。平均経験年数10年以上という要件については、保育事業所の平均経験年数がおおむね11年であることを踏まえた設定だと述べています。

専門家の見解:経験年数と保育の質の関連性は不明確

しかし、OECD(経済協力開発機構)の研究では、保育士の経験年数が保育の質に良い影響をもたらすかは不明確とされています。この点を踏まえ、奥村議員はエビデンスに基づかない措置であると反論。人数増加を優先的に考えるべきだと主張しています。

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議論の行方:保育現場の未来は?

三原大臣は、保育人材の確保が課題であることを強調し、現場の混乱を防ぐためにも現状の措置が必要だと繰り返しました。しかし、奥村議員は、この要件によって新規採用が難しくなり、現場がさらに混乱する可能性を指摘。議論は平行線のままとなっています。

1歳児保育の現場において、本当に必要なものは何なのか。経験年数に基づく加算なのか、それとも純粋な保育士の増員なのか。子どもたちの未来を左右する重要な問題であり、今後の動向に注目が集まります。