皇后陛下美智子さまと、2月に93歳で逝去された作家・曽野綾子さんの深い友情について、改めて振り返ってみましょう。お二人の関係は、70年ほど前、美智子さまが聖心女子大学に入学された頃に遡ります。当時、曽野さんは既に新進気鋭の作家として注目を集めており、美智子さまをはじめとする学生たちの憧れの的でした。
文学を愛する美智子さま:曽野作品への深い共感
皇室に詳しいメディアプロデューサーの渡辺満子氏によると、美智子さまは在学中から曽野さんの存在をご存知だったとのこと。しかし、本格的に親交を深められたのは卒業後、文学という共通の話題を通してでした。美智子さまは、同じ本を読んだ人と共感することが多く、曽野さんとの交流も文学談義がきっかけで深まっていったようです。
美智子さまと曽野綾子さん
美智子さまは曽野さんの作品の熱心な読者でもありました。美智子さまの講演録『橋をかける』や英訳を担当された絵本『THE ANIMALS「どうぶつたち」』などを手がけた編集者・末盛千枝子さんは、曽野さんの長編小説『天上の青』にまつわるエピソードを語っています。
ある日、御所で打ち合わせをしていた末盛さんは、部屋に飾られた美しい濃い青色の朝顔に目を留めました。それは、『天上の青』に登場する朝顔と同じ品種でした。美智子さまに尋ねると、とても嬉しそうにされていた様子が印象的だったといいます。
聖心女子大の絆:先輩・後輩としての温かい交流
美智子さまと曽野さん、そして曽野さんの夫である作家の三浦朱門氏(故人)は、美智子さまのお誕生日の集まりなどで顔を合わせることもあったそうです。末盛さんによると、美智子さまは曽野さんに接するとき、先輩と話をするような雰囲気だったとのこと。聖心女子大学での先輩・後輩という絆が、二人の間にはずっと存在していたのでしょう。
心温まるエピソード:美智子さまのピアノ伴奏
曽野さんはかつて、美智子さまのお誕生日の集まりでのエピソードを語っていました。美智子さまは、ご自身の誕生日会で約30分の音楽会を開き、自らピアノ伴奏をされていました。プログラムには、伴奏者として「白樺」と記載されていたそうです。
曽野綾子さん
「白樺」は美智子さまのお印。本来であれば「皇后陛下」と記載すべきところを、あくまで自分は伴奏者であるという謙虚な姿勢で、他の演奏者たちに配慮されていたのです。このエピソードからも、美智子さまのお人柄が伺えます。
美智子さまと曽野綾子さん。70年に渡る友情物語は、文学という共通の愛で結ばれた、聖心女子大学の先輩・後輩という温かい絆によって支えられていました。二人の交流は、私たちに友情の尊さを改めて教えてくれるようです。