山上徹也被告の裁判が結審、旧統一教会と「元信者」の証言

安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などに問われている山上徹也被告の裁判が12月18日、奈良地裁で結審しました。この歴史的な公判の行方を静かに見守っていた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の「元信者」が、事件の背景に深く関わる山上被告の母親について語りました。社会に大きな衝撃を与えたこの事件の裁判は、来年1月に判決が言い渡される予定です。

世紀の銃撃事件、検察側は無期懲役を求刑

奈良地裁で開かれた15回目の公判で、検察側は「我が国の戦後史に前例を見ない犯行であり、極めて重大な結果と社会的影響をもたらした」と述べ、山上徹也被告に対し無期懲役を求刑しました。一方、山上被告の弁護側は、犯行に至るまでの経緯、特に旧統一教会による家庭崩壊の状況を考慮し、「重くとも懲役20年までにとどめるべき」と反論し、最終弁論を終えました。この裁判の判決は、来年1月21日に言い渡されることになっています。

「気になる存在」元信者が語る山上被告の母親

この日、奈良地裁のそばにたたずんでいたのは、かつて旧統一教会の信者であったAさんでした。事件後、公判の動向を「気になって、つい足を運んでしまいました」と語るAさんの証言は、山上被告の犯行動機の一端を浮き彫りにします。これまでの公判では、山上被告の母親が旧統一教会の信仰に傾倒し、1億円以上もの多額の献金を続けた結果、家庭が崩壊したことが山上被告の「恨み」の背景にあるとされてきました。母親は献金のために何度も韓国へ渡航し、山上被告が自衛隊にいた時でさえ、渡航費用をねだる電話をかけていたといいます。

Aさん自身も韓国への渡航経験があり、山上被告の母親と韓国での「修練会」で一緒になったことがあると振り返ります。「私が山上被告のお母さんと知り合ったのは、旧統一教会の集会でした。お母さんは多額の献金をされており、幹部からも『すごい人だ』と一目置かれる存在で、集会でも常に前方の良い席が用意されていました」。Aさんは、同じ奈良県在住だったこともあり、集会で話す機会があったと語り、「熱心に旧統一教会の教義を唱えていました」と、当時の母親の様子を証言しました。

旧統一教会との関連で注目される山上徹也被告旧統一教会との関連で注目される山上徹也被告

高校生時代の山上被告と母親、忘れられない出会い

銃撃事件後、Aさんの脳裏に強く残っている一つの場面があります。「100人ほどが集まった、わりと大きな集会のときでした。会場のロビーでお母さんに会ったら、『今日は次男も連れてきた』と言って、高校生くらいだった山上被告が一緒にいました」。Aさんが挨拶をすると、山上被告は「つまらなそうな顔」をしており、母親が「うちの子は教会のことが……」と言って、挨拶を促していたといいます。「あの頃から旧統一教会が嫌だったのだと思います」とAさんは推測します。安倍元首相の銃撃事件で旧統一教会への恨みがあったと報じられ、それが「あのお母さんの次男のことだ」と分かった時、Aさんは「本当に衝撃で、震えが止まりませんでした」と、その時の深い感情を語りました。

この裁判の結審は、事件の真相と背景にある複雑な問題を改めて社会に問いかけるものとなりました。山上被告の動機形成に大きな影響を与えたとされる旧統一教会との関係、そしてそれが一人の人間の人生に与えた影響は、判決の行方と共に多くの人々の注目を集め続けるでしょう。来年1月21日に下される判決が、この事件に一つの区切りをつけることになります。