2025年大阪・関西万博の開幕が目前に迫る中、チケット販売戦略に注目が集まっています。当初「並ばない万博」を掲げ、事前予約制を強調していたにも関わらず、前売り券の伸び悩みを受け、開幕直前に当日券の導入を決定。この急転直下の対応に、疑問の声が上がっています。今回は、混乱を極める万博チケット販売の現状と、その背後にある課題を紐解いていきます。
事前予約制から当日券導入へ:迷走するチケット販売戦略
当初、万博協会は混雑緩和のため、インターネットによる事前予約制を基本としていました。万博ID登録、入場日時予約を経て、スマートフォンにQRコードを表示する電子チケットを購入する仕組みです。コンビニ端末や旅行代理店で入場ゲート前で交換する「チケット引き換え券」も用意されていました。
前売り券の種類と販売状況
前売り券は、開幕前日まで販売され、割引価格で購入できるのが魅力です。3月時点で期限が異なる3種類が販売されており、開幕後は入場日時で異なる3種類に切り替わります。最も高額なチケットは、会期中いつでも利用できる一日券で、18歳以上の大人は7500円です。有効期間中、何度でも入場できるパスも販売されています。
alt="大阪・関西万博のチケット購入サイト画面"
目標販売枚数1400万枚に対し、3月12日時点での販売枚数は約820万枚と、目標の6割にも達していません。この販売不振を受け、協会は2月25日、入場ゲート前で当日券を購入できることを発表しました。万博ID登録不要で購入できる「簡単来場予約チケット」も用意され、協会幹部は「開幕後のニーズに対応できた」と説明しています。
専門家からの指摘:消費者目線の欠如
しかし、この対応に疑問を呈する声も上がっています。嘉悦大学経営経済学部の國田圭作教授(行動デザイン)は、万博のチケット販売戦略には「ナッジ」と呼ばれる、消費者をさりげなく誘導する手法が欠如していたと指摘します。
当日券の存在が購買意欲を刺激する
國田教授は、「選択肢を提示することで、消費者は初めてどちらが良いか考え始める。当日券が販売され、予約状況によっては購入できない可能性があるとわかれば、『前売り券を買っておこう』という心理が働く」と説明します。しかし、協会は当初、当日券の販売を予定していませんでした。このため、前売り券の購入は「誘導」ではなく「強制」に近い状態であり、ナッジ効果が薄かったと指摘しています。
ダイナミックプライシングの導入も有効
さらに、國田教授は「価格戦略が見えない」とも指摘します。混雑緩和を目指すのであれば、航空会社やテーマパークで導入されているダイナミックプライシング(需要に応じて価格を変動させる仕組み)が有効だったと提言しています。パビリオン優先入場権付きの高額チケットを期間限定で販売するなど、価格設定のバリエーションを増やすことも有効な手段だと考えています。
alt="万博チケットの主な券種"
まとめ:ユーザー目線を取り戻せるか?
開幕直前での当日券導入は、混乱を招きかねないリスクも孕んでいます。万博協会は、消費者目線に立ち、より柔軟なチケット販売戦略を展開していく必要があるでしょう。今後の動向に注目が集まります。