【北京=西見由章】中国の習近平国家主席は11日、ギリシャのパブロプロス大統領とアテネで会談し、巨大経済圏構想「一帯一路」建設に向けた協力強化で一致した。国営新華社通信が伝えた。中国の国家主席がギリシャを公式訪問するのは11年ぶり。中国はギリシャの港湾を一帯一路の欧州進出に向けた“橋頭堡(きょうとうほ)”として利用し、影響力を強める構えだ。
習氏は会談で、ギリシャのピレウス港とハンガリーのブダペストを結ぶ海上・鉄道路線「中国・欧州陸海エクスプレス」について「(中国と欧州を結ぶ)貨物輸送などの重要なルートにしたい」と述べた。
地中海沿岸で最大規模のピレウス港は2016年に中国国有の海運大手、中国遠洋海運集団(COSCO)が買収した。中国外務省の秦剛次官によると、習氏は政治の実権を持つミツォタキス首相とも首脳会談を行い、港湾や金融などに関する政府間の協力文書に調印する予定だ。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、ギリシャ政府は10月、総額6億7千万ドル(約730億円)に上るCOSCOの港湾拡張計画を認可。ただ計画の一部は不認可となっており、今回の中国とギリシャの首脳会談で議題となる可能性があるという。
ギリシャは4月、クロアチアで開かれた中国と中東欧地域の計16カ国との首脳会議「16+1」に初めて参加し、「17+1」に拡大された。中国は欧州諸国の中でも突出して対中経済協力に力を入れるギリシャを通じて、中東欧や南欧への影響力を強めたい考えだ。
また欧州連合(EU)主要国のイタリアも3月、先進7カ国(G7)で初めて一帯一路への参画を表明するなど中国は欧州諸国の取り込みに力を入れている。
一方、通商分野などで対中圧力を強める米国は、欧州における中国の影響力拡大を注視している。10月にアテネを訪問したポンペオ米国務長官は、中国が「経済的手段を用いて、相手国を借金漬けにする不公平な取引を強要している」と批判し、対中傾斜を強めるギリシャを牽制(けんせい)した。