オウム真理教事件30年:今も続く住民の闘い、風化への懸念と後継団体への警戒

地下鉄サリン事件から30年。事件の記憶が薄れゆく一方で、オウム真理教の後継団体「ひかりの輪」の活動拠点周辺では、住民による警戒と抗議活動が今もなお続けられています。東京都世田谷区のマンションに拠点を置く「ひかりの輪」に対し、住民団体は解散を求め、社会の関心が薄れることへの危機感を募らせています。

住民の不安:静かな住宅街に突如現れた「ひかりの輪」

「ひかりの輪」が世田谷区南烏山のマンションに入居したのは2000年12月。穏やかな住宅街に突如として現れた後継団体の存在は、住民に大きな衝撃を与えました。「世田谷にオウム真理教の支部があったわけでもなく、後継団体が来るなんて全く想像していませんでした」と、烏山地域オウム真理教対策住民協議会の古馬一行会長は当時を振り返ります。

南烏山のマンションに掲げられた抗議の横断幕南烏山のマンションに掲げられた抗議の横断幕

事件を起こした団体への恐怖と嫌悪感は強く、住民はマンションを避けるようになり、商店街の売上にも影響が出ました。住民の生活は一変し、不安な日々が続くこととなりました。

終わらない闘い:警戒と監視、そして風化への危機感

「ひかりの輪」は現在もヨガセミナーなどを開催しており、団体規制法に基づく観察処分の対象となっています。マンション前には警視庁と公安調査庁の詰め所が設置され、住民団体は抗議デモや講演会、広報活動などを通して警戒を続けています。

2001年に発足した住民協議会は、地道な活動を続けていますが、新たな事件が起こっていない現状では、後継団体の実態を伝えることの難しさを感じています。街頭での署名活動への協力も減少傾向にあり、社会の関心の低下は深刻です。

観察処分終了への懸念:教義回帰の可能性

古馬会長は、観察処分が終了した場合の「ひかりの輪」の動向を懸念しています。「観察処分がなくなって監視の目がなくなれば、オウム真理教の教義に回帰する可能性も否定できません。そうなってからでは遅いのです」と危機感を募らせます。

食の安全を守るNPO法人「食の未来研究所」代表の山田花子さん(仮名)も、「カルト集団の活動は社会の安全を脅かす可能性がある。継続的な監視と情報公開が重要」と指摘しています。

警視庁による監視活動警視庁による監視活動

地域の安全を守るために:継続的な活動の必要性

古馬会長は、「観察処分を維持するためにも、地域での活動を継続していく必要がある」と強調します。事件の記憶が風化し、社会の関心が薄れる中で、住民たちは今もなお、地域社会の安全を守るための闘いを続けています。