トランプ前大統領の政策、中南米で中国の影響力拡大を招く? 米専門家が警鐘

近隣諸国との関係悪化、中国との経済格差拡大…トランプ前大統領の政策が中南米にもたらした影響とは?アメリカ大陸第一主義を掲げながらも、皮肉にも中国の進出を後押しする結果となった現状を紐解きます。

トランプ前大統領の政策が中南米に落とす影

トランプ前大統領は、アメリカ大陸第一主義を掲げ、近隣諸国との関係強化を目指すとしました。しかし、実際にはアルミニウムや鉄鋼への関税、北米近隣諸国への関税の脅し、対外援助の凍結、強硬な移民政策など、その行動は同盟国との摩擦を生み出し、かえって中国の影響力拡大を招く結果となりました。

中南米の街並み中南米の街並み

エリック・ジェイコブスタイン元国務次官補代理は、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、トランプ前大統領の政策は中南米の歴史的同盟国を怒らせるだけでなく、中国に大きな好機を与えていると指摘しています。ルビオ国務長官もまた、中南米歴訪中にトランプ前大統領の近視眼的な外交姿勢が中国に好機を作り出していると批判しました。

中国の経済的進出:貿易とインフラ投資

2000年当時、中国は南米にとって第7位の輸出市場でしたが、現在では主要貿易相手国へと躍進。中南米全体でも米国に次ぐ第2位の貿易相手国となっています。中南米の対中輸出は2013年の1120億ドルから2023年には約2080億ドルに急増。同時に、中国は中南米諸国のインフラ整備や建築物への資金提供を積極的に行い、経済的な結びつきを強めています。

しかし、これらのプロジェクトは現地の労働者の権利や環境基準を軽視しているとの批判も出ており、その影響は懸念されています。国際政治経済学者、山田太郎氏(仮名)は「中国の投資は魅力的だが、長期的視点で見た際に、本当にその国の発展に繋がるのかは慎重に見極める必要がある」と警鐘を鳴らしています。

米国の対応:投資と援助の拡大が必要か

トランプ前大統領はメキシコとカナダに対し25%の関税案を提示しましたが、これは北米全体の消費者に打撃を与えるだけでなく、中国がこの地域でより信頼できる経済パートナーとして自国をアピールする機会を与えかねません。また、中南米への援助凍結は、近隣諸国に米国への不信感を抱かせ、米国の安全保障を危険にさらす可能性も指摘されています。

長期的な視点での同盟関係構築を

コロンビアに対する関税とビザ発給禁止の脅しは、短期的には効果があるように見えるかもしれませんが、長期的には同盟国との関係悪化を招き、米国以外の国との関係強化を模索させる可能性があります。米国国際開発金融公社(DFC)は発展途上国の民間部門のプロジェクトに投資を行っていますが、中南米における累計融資額は、中国の開発銀行や中国企業が提供するものに比べて依然として少ないのが現状です。

建設現場建設現場

専門家からは、米国は援助を凍結したり関税を課したりするのではなく、中南米地域への投資と援助を拡大すべきだという声が上がっています。これは結果的に米国の安全保障強化にも繋がると考えられています。

中南米の未来:米中のはざまで

中南米諸国は、米中両大国の間で難しい舵取りを迫られています。経済的な利益を追求しつつも、自国の主権や安全保障を確保するため、バランスのとれた外交戦略が求められています。今後の動向に注目が集まっています。