刑務所を出所したものの、再び罪を犯してしまう。そんな再犯の連鎖は、残念ながら珍しいことではありません。一体なぜ、彼らは犯罪を繰り返してしまうのでしょうか?元受刑者の告白を通して、その背景にある苦悩、そして更生への希望を探ります。本記事では、作家・山本譲司氏のノンフィクション『出獄記』(ポプラ社)から、ある出所者の物語を紹介します。
再犯の影に潜む「被害者への恨み」と「共犯者への憎しみ」
「ムショの中でも、『死んだあいつのほうが悪い』って、ずっと思い続けてたんだ。それから、共犯者のことも、恨み続けてたね」
2007年12月、56歳の平沼隆康さん(仮名)は、そう語りました。彼は、人殺しで服役し、出所後、行く当てがなく支援を求めてきたのです。平沼さんの支援を依頼したのは、北関東に住む83歳の元保護司、近藤さん(仮名)。42歳から78歳まで保護司を務め、多くの出所者と向き合ってきました。
alt="元受刑者との面会の様子"
近藤さんと山本氏の出会いは、山本氏の著書『累犯障害者』がきっかけでした。近藤さんは手紙で本の感想を伝え、自身も知的障害者や聴覚障害者の出所者を担当した経験があると綴っていました。山本氏は近藤さんと連絡を取り、様々な出所者について話を聞きました。
老朽化した家で始まる新たな生活、そして更生への道
近藤さんの自宅は古い家で、壁の一部が剥がれ落ち、柱も朽ちている部分がありました。5年前に妻を亡くし、今は平沼さんと二人暮らし。平沼さんは半年前に刑務所を満期出所し、近藤さんの家に間借りしているとのことでした。
更生支援の難しさ:罪の意識と社会復帰の葛藤
更生支援の現場では、平沼さんのように、被害者への恨みや共犯者への憎しみを抱えたまま出所するケースが少なくありません。こうした感情は、更生への道を阻む大きな壁となります。罪を犯したという事実を受け止め、更生への一歩を踏み出すためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。
例えば、更生保護施設や自助グループなどは、出所者が社会復帰に向けて必要な支援を提供しています。また、近藤さんのように、元保護司として個人的な支援を続ける人もいます。 更生支援の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「出所者の社会復帰には、住居の確保、就労支援、そして精神的なケアが重要です。特に、罪の意識や社会への不安を抱える出所者には、寄り添い、共に歩む姿勢が求められます」と述べています。
alt="更生支援のイメージ"
再犯防止への取り組み:社会全体で支える未来へ
平沼さんのような出所者が再び罪を犯すことなく、社会の一員として生きていけるよう、社会全体で更生を支える仕組みづくりが重要です。更生支援の充実、そして偏見のない社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。