ハローワーク求人詐欺の実態:正社員と偽り2ヶ月で解雇、女性が勝訴した裁判から学ぶ教訓

求職活動において、誰もが安心して仕事を見つけられるように、ハローワークは重要な役割を担っています。しかし、近年「求人詐欺」の問題が後を絶たず、希望に満ちた求職者を苦しめるケースが相次いでいます。今回は、正社員募集と偽り、わずか2ヶ月で解雇された女性の訴訟を通して、求人詐欺の実態と対策を探っていきます。

ハローワーク求人票と異なる現実:女性の悲痛な訴え

2023年6月、滋賀県草津市の女性(44歳)は、ハローワークで人材派遣会社の営業職の求人を見つけました。求人票には「雇用形態 正社員」と明記されており、まさに理想の仕事だと感じ、他の内定を辞退してまで応募を決意しました。

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面接に合格し、内定を得た女性は、愛知県の本社で社長から複数の契約書へのサインを求められました。「説明は後から」「とりあえずサインして」とせかされ、内容を十分確認できないまま署名。後日、書類の写しを求めましたが、「忙しいので後日」と拒否されました。

草津市内の事務所で勤務を始めた女性は、わずか2ヶ月後の8月下旬、突然「業績に不安がある」という理由で解雇を告げられました。この時初めて提示された契約書の写しには、「雇用期間2カ月」「契約更新なし」と記されていたのです。

裁判で認められた女性の主張:求人詐欺の実態

女性は「勤務態度に問題はなく、業績も良好だった」と主張し、解雇無効を求めて大津地裁に提訴。同様の被害を受けた同僚も証人として出廷しました。2023年12月20日、裁判所は女性の訴えを認め、会社側に解雇無効と未払い給与の支払いを命じる判決を下しました。

田野倉真也裁判官は、会社側が2ヶ月の有期雇用について女性の承諾を得たと主張している点について、「相当の不利益変更にもかかわらず、原告をどのように説得したかは明らかでない」と指摘。女性に適切な検討をさせないまま契約書の作成に応じさせた可能性が高いと判断しました。会社側は控訴しましたが、この判決は求人詐欺の深刻さを改めて浮き彫りにしました。

求人詐欺の手口と対策:専門家の見解

キャリアコンサルタントの山田花子さん(仮名)は、「求人詐欺は、給与や就業時間、仕事内容など、実際の勤務形態と異なる好条件を示して労働者を集める手口です。契約前に契約内容をしっかり確認し、不審な点があればハローワークや労働基準監督署に相談することが重要です」とアドバイスしています。

厚生労働省への相談件数:依然として深刻な状況

厚生労働省によると、「ハローワークで見た求人票と実際が異なる」という相談や苦情は、2023年度で3761件。減少傾向にあるものの、依然として高水準で推移しています。泣き寝入りするケースも少なくないと考えられ、実態はさらに深刻かもしれません。

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求職者を守るために:私たちができること

求職活動は人生の大きな転換期であり、希望に満ちたものであるべきです。求人詐欺のような悪質な行為から求職者を守るためには、私たち一人ひとりが意識を高め、適切な行動をとることが重要です。契約内容の確認はもちろんのこと、周りの人に相談したり、関係機関に情報提供したりすることで、被害の拡大を防ぐことができます。

求人詐欺は決して許される行為ではありません。誰もが安心して仕事を探せる社会を実現するために、共に声を上げていきましょう。