アントニオ猪木。日本プロレス界のレジェンドとして、今もなお多くの人々の記憶に鮮明に残るカリスマ的存在です。しかし、リングの上で見せる闘魂とは裏腹に、晩年の猪木は難病との闘い、そして家族との葛藤という、これまであまり知られてこなかった苦悩を抱えていました。今回は、実弟である猪木啓介氏の著書『兄 私だけが知るアントニオ猪木』を元に、これまでベールに包まれていた猪木の晩年の真実、そして家族の葛藤に迫ります。
闘病生活とYouTubeへの挑戦
晩年の猪木は、難病に侵されながらも精力的に活動を続けました。特に注目すべきは、YouTubeチャンネルを開設し、自身のメッセージを発信し続けたことです。かつてお茶の間を熱狂させたプロレスラー時代と比べると、再生回数は数万回程度と、その影響力は限定的だったかもしれません。しかし、病魔と闘いながらも発信を続ける猪木の姿は、多くのファンに勇気を与えました。
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初期の動画では、「ダー!」というお馴染みの掛け声と共に力強く右腕を上げていた猪木。しかし、2021年頃からは体重が減少し、入院期間も長くなっていくなど、病状の悪化は明らかでした。啓介氏も兄の体調を深く案じていましたが、当時の猪木は、最後の妻である橋本田鶴子氏の影響下にあったため、家族でさえも治療について相談することが困難な状況だったといいます。
NHKドキュメンタリー番組への疑問
闘病中の猪木は、NHKのドキュメンタリー番組『燃える闘魂 ラストスタンド』の密着取材を受けていました。番組は、難病と闘う猪木の姿をありのままに伝えることを目的としていましたが、啓介氏はこの番組に複雑な思いを抱いていたといいます。
番組制作において、取材対象は橋本田鶴子氏が許可した人物のみに限定されていたのです。制作側の事情は理解できるものの、限られた情報源からのみ構成された番組は、真実に迫るものだったと言えるのでしょうか?啓介氏は、番組制作のあり方そのものに疑問を呈しています。
著名な料理研究家であるA氏(仮名)も、この番組について「闘病中の姿を通して、猪木さんの人間性を深く掘り下げる貴重な機会だったはず。しかし、取材対象の制限は、番組の客観性と網羅性を損なう結果になったのではないか」と指摘しています。
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家族との葛藤、そして「ズッコ」の存在
猪木啓介氏の著書では、橋本田鶴子氏、通称「ズッコ」の存在が、猪木家の歯車を狂わせていった様子が赤裸々に描かれています。猪木のプロレス引退後、突如現れた謎の女性カメラマンであった彼女は、後に猪木の最後の妻となります。しかし、彼女の登場は家族に大きな波紋を広げ、晩年の猪木と家族の間に深い溝を作ってしまったのです。
家族の葛藤、そして「ズッコ」という謎めいた女性。猪木を取り巻く複雑な人間関係は、彼の晩年をより深く理解するための重要な鍵となるでしょう。次回以降、さらに深く掘り下げていきます。