鈴木憲和農林水産大臣の就任早々の発言で、にわかに注目を集めている「おこめ券」。米価高騰への対策として政府がその配布を検討する中、その実効性や背景にある利権構造について疑問の声が上がっています。果たして、この「おこめ券」は国民の生活を潤す真の物価高対策となるのでしょうか。
2種類のおこめ券と隠れた経費
現在流通しているおこめ券には、全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)が発行する「全国共通おこめ券」と、JAグループの全国農業協同組合連合会(JA全農)が発行する「おこめギフト券」の2種類があります。いずれも額面は1枚500円ですが、印刷費や手数料として60円が差し引かれるため、実際に米の購入に利用できるのは440円に過ぎません。
鈴木農相は米価高騰への対応としておこめ券の配布を提案。これに対し、全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長は支持を表明し、有効性を示唆しています。しかし、この仕組みには疑問が呈されています。宮城大学名誉教授の大泉一貫氏は、「おこめ券の配布が実現すれば、1枚あたり60円の経費がJA全農か全米販に入る。農水省出身の農水族議員である鈴木大臣の提案には、利権が絡んでいると見る向きがあっても不思議ではない」と指摘。農水族議員、農水官僚、JA農協による「政官業トライアングル」の利権構造が背景にある可能性を強調しています。
宮城大学名誉教授の大泉一貫氏が「政官業トライアングル」の利権構造について語る様子
4000億円の特別枠と「焼け石に水」の実態
政府は物価高対策の一環として、地方への交付金を通じておこめ券の配布を検討。11月21日の臨時閣議では、自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」に食料品価格上昇対応のための約4000億円の特別枠が設けられ、おこめ券や電子クーポンなどの活用が促されることになりました。これにより、1人あたり3000円相当の配布が想定されています。
しかし、大泉名誉教授はこの対策について懐疑的な見方を示しています。「おこめ券や電子クーポンの配布は1回限りで、3000円程度。おこめ券5枚では額面3000円でも、実際に使えるのは2200円です。物価高対策としては、ほとんど期待できないでしょう」。
現在の米価は依然として高止まりしており、11月17日~23日の全国スーパーでのコメ5キロあたりの平均価格は4312円でした。3000円相当のおこめ券を受け取ったとしても、現在の価格では新米はおろか、備蓄米を混ぜた3000円台のブレンド米1袋分にも満たないのが実情です。これはまさに「焼け石に水」と言わざるを得ません。
根本的な解決策なき事務負担増大
鈴木農相は21日の閣議後会見で、「今の価格では思うようにお米を買えない方々に対して、少しでも心置きなく必要な量、十分な量を購入いただけることを期待している」と述べ、おこめ券配布への期待を表明しました。しかし、大泉名誉教授は、「おこめ券の配布には米価を下げる効果は全くなく、根本的な解決策にはなりません。4000億円を使って自治体の事務負担を増やすだけでしょう」と厳しく指摘しています。
米価高騰という喫緊の課題に対し、政府が打ち出す対策が本当に国民の生活を助け、長期的な解決につながるものなのか、その真価が問われています。目先の対応だけでなく、コメの需給バランスや流通構造そのものに踏み込んだ議論が求められるでしょう。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/1fe2b9cfa06b679e138a0c64f4616814dd48d7f9





