大阪ATCのストリートピアノ撤去騒動:認識の齟齬が生んだ悲劇

大阪市住之江区のATCシーサイドテラスに設置されていたストリートピアノが撤去された。運営側の「家で練習しろ」発言が炎上し、謝罪、撤去に至った一連の騒動は、ストリートピアノの在り方について改めて考えさせる出来事となった。

運営側の認識不足が招いた批判の嵐

3月22日、運営側の公式Xアカウント「南港ストリートピアノ」が、利用者に向けて「練習は家でしてください」と投稿。この発言が「ストリートピアノの趣旨に反する」と批判を浴び、炎上騒動へと発展した。運営側は25日に謝罪し、ピアノの撤去を発表。27日には撤去完了が報告された。

ATCシーサイドテラスのフードコートATCシーサイドテラスのフードコート

制限の多いストリートピアノ

現地取材によると、ピアノはシーサイドテラス内のカフェレストラン『goo-note』前に設置されていたが、騒動を受けて既に撤去済み。フードコートの店員によると、ピアノは3年ほど前に設置され、土日祝日の14時から18時のみ利用可能だったという。利用時間は限られていたものの、順番待ちができるほど人気だったようだ。

しかし、運営側が定めた利用規約には、「1人10分まで」「優しい演奏」「告知活動禁止」など、多くの制限が設けられていた。これらの制限が「ストリートピアノ」の概念と乖離しているとして、以前から疑問の声が上がっていたという。

ストリートピアノと飲食店の相性の悪さ

騒動の背景には、ストリートピアノと飲食店の相性の悪さがあったと言える。フードコートの別の店員によると、子供がおもちゃ代わりにピアノを叩いたり、大人の演奏が騒音と捉えられたりといった苦情が、カフェに寄せられていたという。

音楽専門家による運営と利用者のギャップ

運営者は音楽教室を経営する音楽家で、著名ピアニストとの交流もある人物とされている。そのため、ピアノ演奏へのこだわりが強く、ストリートピアノであっても演奏に一定のレベルを求めていた可能性がある。しかし、誰でも自由に弾けるというストリートピアノの特性上、演奏レベルの差は避けられない。このギャップが、今回の騒動を招いた一因と言えるだろう。

撤去されたピアノの跡地に置かれたテーブル撤去されたピアノの跡地に置かれたテーブル

ストリートピアノの設置場所を考える

今回の騒動は、ストリートピアノの設置場所について改めて考えさせる契機となった。駅など人の流れが多い場所であれば、演奏が気に入らなければ立ち去ることができる。しかし、飲食店のような閉鎖空間では、演奏を強制的に聞かされる状況になりかねない。

今後のストリートピアノの在り方

「誰でも気軽に演奏を楽しめる」というストリートピアノ本来の魅力を維持しつつ、周囲への配慮も両立させるためには、設置場所の選定や運営方法の工夫が不可欠となるだろう。今回の騒動を教訓に、より良いストリートピアノの在り方が模索されることを期待したい。