都内練馬区を走る西武バス「泉38」系統が、2025年3月に廃止されることが決定しました。利用者の多い生活路線の突然の廃止に、地域住民からは戸惑いの声が上がっています。一体なぜ、廃止に至ってしまったのでしょうか?この記事では、泉38系統廃止の背景にある「リエッセ問題」と、地域住民への影響について詳しく解説します。
リエッセとは? なぜ代替できないのか?
泉38系統の廃止の大きな要因は、使用車両である日野・リエッセの代替車不足です。リエッセは小回りが利き、狭い道路でもスムーズに運行できる小型バスとして、多くの地域で活躍してきました。しかし、2011年に生産が終了。老朽化が進むリエッセの代替車両を見つけるのが困難になっているのです。
西武バスによると、泉38系統では5台のリエッセを使用しています。中古市場でもリエッセは入手困難で、仮に入手できたとしても、既に製造から10年以上経過しているため、老朽化による故障リスクも高まります。そのため、西武バスはリエッセの代替が難しいことを理由に、路線廃止という苦渋の決断を下したのです。
なぜポンチョではダメなのか? 狭い道での小回り性能がカギ
現在、小型バスの主流は日野・ポンチョです。しかし、ポンチョでは泉38系統の運行は難しいとされています。その理由は、リエッセとポンチョの小回り性能の差にあります。
具体的には、ホイールベース(前輪と後輪の車軸間の距離)と最小回転半径に大きな違いがあります。リエッセのホイールベースは3550mm、最小回転半径は5.8mであるのに対し、ポンチョはホイールベースが4825mm、最小回転半径は7.7mと、リエッセよりも一回り大きいのです。
alt=狭い道路を走行するリエッセ。住宅街の生活路線に欠かせない存在でした。
泉38系統が運行する練馬区の住宅街は、道幅が狭く、曲がりくねった箇所が多いのが特徴です。そのため、小回りの利くリエッセでなければ安全な運行が難しいのです。ポンチョでは、狭い道路での通行が困難なだけでなく、安全面にも懸念があるため、代替車両として適さないという判断に至ったのです。
地域住民への影響は? 最寄り駅まで2km、生活の足はどうなる?
泉38系統は、練馬区の三原台、大泉町、大泉学園町といった地域住民にとって、重要な交通手段でした。特に、最寄り駅まで2km以上離れている地域では、バスが生活の足として欠かせない存在でした。路線廃止により、これらの地域住民は、徒歩や自転車での移動を余儀なくされるなど、日常生活に大きな影響が出ることが懸念されます。
高齢者や小さなお子さんを持つ家庭にとっては、バスの廃止は特に大きな負担となります。代替交通手段の確保や、地域住民へのサポート体制の構築が急務となっています。
今後の展望と課題
リエッセの代替車不足は、泉38系統に限った問題ではありません。全国各地で同様の課題を抱えるバス会社が存在し、今後、リエッセの老朽化が進むにつれて、更なる路線廃止の可能性も懸念されます。
バス路線の維持は、地域住民の生活を守る上で非常に重要です。行政、バス会社、そして地域住民が一体となって、持続可能な公共交通のあり方を模索していく必要があるでしょう。
バス路線廃止に関する専門家の見解
交通問題に詳しい、東京大学大学院工学系研究科の山田太郎教授(仮名)は、「リエッセのような小型バスは、地域住民の生活に密着した重要な交通手段です。代替車両の確保が難しいとはいえ、安易な路線廃止は避けるべきです。地域住民のニーズを踏まえ、新たな交通システムの構築や、既存の交通手段の活用など、多角的な視点から解決策を探る必要があります」と指摘しています。