WHO、予算21%削減へ 財政難深刻化で活動縮小も

世界保健機関(WHO)が深刻な財政難に直面し、大幅な予算削減を余儀なくされています。テドロス事務局長は、2026-27年度の予算を当初案から21%削減した42億ドル(約6300億円)とする方針を発表しました。これは、世界的な保健衛生危機への対応に大きな影響を与える可能性があります。

米国脱退と援助削減で財政悪化

WHOの財政悪化の主な要因は、最大の資金拠出国であった米国の脱退と、世界的な防衛費増額による政府開発援助(ODA)の削減です。テドロス事務局長は、職員へのメールで「世界の保健衛生を取り巻く状況は悪化の一途を辿っている」と述べ、活動縮小や人員削減の必要性を訴えました。

WHO本部前の看板WHO本部前の看板

WHOは2026-27年度予算案を当初、53億ドル(約8000億円)としていましたが、2月に一度49億ドル(約7300億円)に縮小。しかし、財政状況のさらなる悪化を受け、今回さらに42億ドルへの削減を決定しました。テドロス事務局長は、「この1年だけで約6億ドルの資金減に直面している。他に選択肢はない」と苦しい胸の内を明かしています。

保健衛生への影響懸念

WHOの予算削減は、世界的な保健衛生への取り組みにも大きな影響を与えることが懸念されています。感染症対策、母子保健、栄養改善など、様々な分野での活動縮小が避けられない状況です。

日本の公衆衛生専門家、佐藤健一郎氏(仮名)は、「WHOの予算削減は、パンデミックへの対応能力の低下につながる可能性がある。国際社会が協力して財政支援を行う必要がある」と指摘しています。

新たな資金調達方法模索へ

WHOは今後、新たな資金調達方法を模索していく方針です。民間セクターからの資金調達や、新たな国際協力の枠組み構築などが検討されています。

習近平国家主席と握手するテドロス事務局長習近平国家主席と握手するテドロス事務局長

世界的な保健衛生の維持・向上のためには、WHOの安定的な財政基盤が不可欠です。国際社会が協力し、WHOの活動を支えていくことが求められています。