奈良市議会で代理投票問題:高齢議員が居眠り同僚のボタンを押す

奈良市議会で、81歳の市議が居眠りしていた79歳の同僚議員の代わりに投票ボタンを押すという出来事が発生し、波紋を広げています。この出来事は、3月28日に行われた市議会3月定例会の本会議採決中に起こりました。

事件の概要:居眠り議員の代わりに投票ボタンを押す

複数の議案が電子採決される中、最初の特別会計など5議案の一括投票で、自民党・無所属の会の北良晃市議(81)が自身の投票ボタンを押した後、隣席で目を閉じている同会派の土田敏朗市議(79)の投票ボタンを代わりに押しました。

奈良市議会の採決で隣席の卓上にある投票ボタンを押した直後の北良晃市議(右)と目を閉じている土田敏朗市議(左)奈良市議会の採決で隣席の卓上にある投票ボタンを押した直後の北良晃市議(右)と目を閉じている土田敏朗市議(左)

この行為に気づいた市職員が土田市議に駆け寄り、その後の採決は続けられました。市議会は数時間後に賛否数を修正し、議案の可決は有効としました。

代理投票の背景と問題点

北市議は朝日新聞の取材に対し、「土田市議は寝ていたが、同じ会派なので賛否は分かっていた」と説明し、代理投票を正当化するような発言をしています。しかし、これは議会における民主主義の原則を揺るがす重大な問題です。

地方自治体の専門家であるA大学B教授は、「議員個人の意思に基づく投票は、民主主義の根幹をなすもの。たとえ賛否が分かっていたとしても、代理投票は許される行為ではない」と指摘しています。

代理投票が及ぼす影響

代理投票は、議員個人の責任を放棄するだけでなく、議会の信頼性をも損なう行為です。市民の代表として選ばれた議員が、自らの職務を適切に果たせない状況であれば、議会の機能不全につながる可能性も懸念されます。

欠席の議員の投票権を行使する代理投票のイメージ欠席の議員の投票権を行使する代理投票のイメージ

今後の対応と課題

奈良市議会は、この問題を受けて懲罰動議の提出を視野に対応を協議しています。再発防止策の検討も必要となるでしょう。高齢化が進む地方議会において、議員の健康状態や議会運営のあり方が改めて問われています。C自治体研究所のD主任研究員は、「議員の高齢化は全国的な課題。議会運営の効率化やIT化を進めるなど、時代に合わせた改革が必要だ」と提言しています。

この事件は、議員の意識改革だけでなく、議会全体のシステム見直しを迫る重要な契機となるはずです。

まとめ:議会運営の透明性確保に向けて

今回の代理投票問題は、地方議会のあり方を改めて問うものです。議員一人ひとりが責任感を持って職務を遂行し、議会運営の透明性を確保していくことが求められています。