集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法(安保法制)が強行採決されてから10年が経過した2025年9月19日夜、東京の国会正門前で大規模な抗議行動が展開されました。約2300人の参加者が集い、日本の軍備拡大の動きや排外主義に反対する様々なスピーチが行われ、市民の懸念が表明されました。この行動は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と「9条改憲NO!全国市民アクション」が共催したものです。
安保法制強行採決の10年前、2015年8月30日には学生団体「SEALDs」などの呼びかけにより、主催者発表で12万人が国会前を埋め尽くしました。今回の抗議行動で主催者を代表して挨拶した菱山南帆子さんは、当時の状況を引き合いに出し、「『今は人が集まらない』という声もあるが、市民運動は潮の満ち引きのようなものだ。引き潮の時にこそ、私たちはしっかりと根差したアンカー(錨)にならなければならない」と訴えかけました。さらに、西日本を中心に進む軍備拡大にも触れ、「10年前と比べて状況はさらに悪化している。『19日行動』をはじめ、全国に共同の闘いが広がっている」と強調。臨時国会で「スパイ防止法案」が提出されるような事態になれば、一致団結して大規模な運動を起こそうと呼びかけました。
菱山南帆子さんが主催者代表としてスピーチする様子
選挙結果と排外主義、外国人政策への強い懸念
「移住者と連帯するネットワーク」(移住連)事務局長の山岸素子さんは、今年7月の参議院選挙に言及し、「各政党が外国人への管理・規制強化、排外主義を競い合うという異常な事態になっている」と指摘しました。選挙時に拡散された「医療や生活保護で外国人が優遇されている」という主張は根拠のないデマであり、実際には日本には外国人の人権を保障する基本法がなく、多くの外国人の権利が日本人と比較して大幅に制限されている現状があります。山岸さんは、「選挙の結果、排外主義を掲げた政党が大きく議席を増やしたことに、私たちは強い懸念を抱いている」と述べました。
また、出入国在留管理庁が今年5月に発表した「不法滞在者ゼロプラン」以降、難民申請中の外国人の子どもたちが家族と共に次々と強制送還される事態が起きています。山岸さんは「日本社会に共に生きる移民、難民、外国ルーツの人々と共に、希望を持って平和に生き続けられる社会を目指し、これからも粘り強く、差別・排外主義に『NO』の声を上げていこう」と強く訴えかけました。
憲法と日本の国益を守る政治の役割
スピーチの最後に登壇した上智大学教授の中野晃一さんは、「トランプ(米大統領)の決断によって、何の道理も正義もなく、日本が戦争をするという状況が見えてきている」と警鐘を鳴らしました。中野教授は、憲法で定められた国民の生命、自由、幸福追求の権利を守ることが政治の役割であるとした上で、「他国の戦争に備え、それについていく準備をすることが日本の国益になるわけがない」と断言しました。
市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の運営委員として野党共闘の橋渡し役も担ってきた中野さんは、「皆さんがこの10年間ずっと声を上げ、私たちを代表する議員を後押ししてきたことで、日本はかろうじて持ちこたえている」と主張。そして、「同じ目標を実現するために、下から連携を再構築し、大きな共同を作り上げていかなければならない」と呼びかけ、市民の連帯の重要性を強調しました。
この日の抗議行動は、「戦争反対」「改憲反対」「ミサイル配備 今すぐ撤回」「排外主義は許さない」「みんなの力で政治を変えよう」といった力強いコールで締めくくられ、参加者たちの熱意と決意が示されました。





