高市首相への批判投稿でロック歌手が炎上、謝罪に至る背景と影響

ロックバンド『GEZAN』のボーカル、マヒトゥ・ザ・ピーポー氏が11月22日、高市早苗首相に関するX(旧Twitter)投稿で「こんなバカが国のトップなの?」と発言し、大きな波紋を呼んだ。この投稿は「感情的で稚拙だった」として29日に長文の謝罪文が発表されたが、一連の騒動は日中関係の悪化とエンターテインメント業界への影響という複雑な背景を映し出している。

マヒトゥ・ザ・ピーポー氏の投稿と謝罪

マヒトゥ・ザ・ピーポー氏は11月22日、高市首相に対し「マジでシンプルになんでこんなバカが国のトップなの?センス磨いてやるからGEZANの武道館こいよ。前売りかいとくから。」とXに投稿した。この表現は瞬く間に批判を浴び、その後29日に「先日の投稿について」と題した3,334文字にわたる謝罪文を公開するに至った。

謝罪文の中で同氏は、「先日の投稿でバカと書いた部分は感情的で稚拙だった。対象が誰であっても適切な言い方ではなかったと思う」と反省の意を示した。同時に、投稿の背景には「中国政府を擁護する意図はなく、音楽の現場を通して繋がった個人史の中でどうしても浮かんだ顔が多すぎたこと、それが奪われかけている現状への危惧が感情的な言い方になった理由」があったと説明。国際的な活動を展開してきた自身の経験から、現状に対する危機感が募っていたことを明かした。GEZANは昨年、初の中国5都市ツアーや台湾公演を成功させ、来年3月には初の武道館ワンマンライブも控えるなど、その活動は多岐にわたる。

高市首相のG20関連X投稿が引き金に

マヒトゥ氏の激怒の引き金となったのは、高市首相が11月21日に自身のXに投稿した南アフリカのG20ヨハネスブルグ・サミットに関するポストだった。首相は、「11月14日の参議院予算委員会で参政党・安藤裕議員から、サミットで着る服について『日本最高の生地と職人の服で外交交渉を。安物では舐められる』と指摘された」ことを明かした上で、「結局、手持ちが少なく、皆様が見慣れたジャケットとワンピースの組み合わせで荷作りを終えましたが…。外交交渉でマウント取れる服、無理をしてでも買わなくてはいかんかもなぁ。」と綴っていた。

日本の高市早苗首相の肖像写真日本の高市早苗首相の肖像写真

この投稿は、その直前に高市首相が台湾有事に触れる発言をしていたこともあり、日中関係が悪化する中で「マウント取れる服」という表現が使われたことに、マヒトゥ氏が呆れと怒りを感じたのかもしれないと指摘されている。

日中関係悪化とエンタメ業界への影響

現在、中国では日本への渡航自粛の呼びかけが続くのみならず、日本人アーティスト(例:ゆず)の公演が次々と中止されるなど、エンターテインメント業界が大きな打撃を受けている。マヒトゥ氏は、こうした市民レベルでの混乱と危機に目を向けるべきだとの思いから投稿したと推測されるが、その言葉遣いがさらなる怒りを買い、炎上へと繋がった。

炎上後のマヒトゥ氏の状況と今後のSNS運用

今回の炎上以降、マヒトゥ氏のもとには複数の脅迫メールが届くなど、彼を取り巻く状況は悪化しているという。謝罪文の最後で同氏は、「わたしは有名人でもカリスマでもなく(自分で言ったことない)間違いも誰かを傷つけもする普通の人間です」と心境を吐露しており、今回の騒動に対する深い疲弊が読み取れる。

公人がSNSで発信する言葉の影響力と、それに対する一般人やアーティストの反応、そしてその後の波紋は、現代社会におけるコミュニケーションの難しさを改めて浮き彫りにした。今後、マヒトゥ氏自身のSNSの使い方がどのように変化していくのか、注目される。