三菱スタリオン:伝説のフルラインターボを支えた名車

三菱自動車が1980年代に掲げた「フルラインターボ」戦略。軽自動車からフラッグシップモデルまで、幅広い車種にターボエンジンを搭載するという、当時としては革新的な取り組みでした。その戦略の頂点に君臨したのが、スポーツクーペ「スタリオン」です。この記事では、スタリオンの魅力と、その進化の歴史を紐解いていきます。

開発秘話:ポルシェ944をライバルに見据えて

スタリオンの開発にあたっては、なんとポルシェ「944」がベンチマークとして設定されていたといいます。当時の三菱のラインアップには、ギャランΣベースのスペシャルティカー「ラムダ」が存在していましたが、スタリオンはラムダのコンポーネンツを流用しつつも、より純粋なスポーツカーを目指して開発されました。自動車評論家の山田太郎氏(仮名)は、「スタリオンは、スペシャルティカーとスポーツカーの隙間を埋める、ニッチな市場を狙ったモデルだった」と分析しています。

三菱 スタリオン三菱 スタリオン

シャープなスタイリングと高性能ターボエンジン

リトラクタブルヘッドライトを採用したシャープなスタイリング、そして力強いターボエンジン。スタリオンは、まさに80年代のスポーツカーを象徴する存在でした。搭載された2.0L直列4気筒ターボエンジンは、GSR-II/IIIで140psを発揮。足回りには、前後ストラット式の4輪独立サスペンションが採用され、優れたハンドリング性能を実現していました。

高速安定性:路面に吸い付くような走り

スタリオンの走りは、特に高速域での安定性が際立っていました。速度を上げるほどに路面に吸い付くような感覚は、まさにスポーツカーと呼ぶにふさわしいものでした。開発陣が目標としていたポルシェ944にも匹敵する、高いレベルの走行性能を誇っていたのです。

進化の歴史:国内最強のターボエンジンへ

しかし、市場での評価は必ずしも芳しいものではありませんでした。スペシャルティカーとスポーツカーの中間的なキャラクターが、ユーザーに受け入れられにくかったのかもしれません。そこで三菱は、スタリオンの進化を続けました。1983年には空冷式インタークーラーを搭載し、175psへとパワーアップ。さらに1984年には、革新的な「シリウスダッシュ3×2エンジン」を搭載したGSR-Vが登場。200ps、28.5kgmという当時国産最強のスペックを誇り、グループAレースへの参戦も開始しました。

三菱 スタリオン三菱 スタリオン

まとめ:時代を駆け抜けた名車

スタリオンは、商業的には大きな成功を収めたとは言えないかもしれません。しかし、その先進的な技術と、熱い情熱を注ぎ込んだ開発陣の想いは、多くの自動車ファンに感銘を与えました。今なお語り継がれる名車、スタリオン。それは、三菱自動車の「フルラインターボ」戦略を象徴する、輝かしい一台なのです。