参院選25京都選挙区:自民・西田氏の苦戦と野党の追い上げ

7月19日夕刻、京都市内の中心部、四条河原町に、切迫した涙声が響き渡った。参議院選挙の最終盤において、自民党の西田昌司氏(66)が大票田の京都市内で臨んだ最後の街頭演説は、陣営が認識していた「厳しい戦い」を如実に物語っていた。選挙戦序盤に主要な訴えとしてきた財政法改正などから一転し、終盤では外交・安全保障分野における責任与党としての立場を強調し、有権者からの直接的な「助け」を求めた。

陣営は選挙期間中、「財政論は有権者に伝わりにくい」として、演説内容の変更を本人に繰り返し促してきたが、ようやく最終局面でその内容が見直された形だ。しかし、陣営幹部は「持論だけで通用する段階ではない」と、終始焦りの表情を隠さなかった。

自民・西田氏の苦戦と戦略転換

西田氏の選挙戦にのしかかったのは、まさに「三重苦」と呼べる重圧だった。まず、自身がかつて所属していた旧安倍派を巡る「政治とカネ」の問題。次に、沖縄県の「ひめゆりの塔」に関する自身の発言。そして、自身がトップを務める与党整備委員会で検討が進む北陸新幹線の延伸計画。これら三つの問題は、他候補からの格好の批判の的となり、選挙戦が進むにつれて批判の鋭さは増していった。

組織戦にも深刻な影響が及んだ。選挙戦の主軸としてフル回転が期待された地元の議員たちは、有権者との距離が近いゆえに批判の矢面に立たざるを得ず、結果として活動量に濃淡が生じた。推薦を出した公明党内でも同様の状況が見られたという。

防戦一方の状況を打開するため、陣営は広範な自民支持層のつなぎ留めに注力した。7月16日には、総裁選で対立関係にあった農林水産大臣の小泉進次郎氏(44)が京都入り。さらに18日には、保守層から高い人気を誇る前経済安全保障担当大臣の高市早苗氏(64)が来援するなど、著名な応援弁士が次々と駆けつけた。

参院選25京都選挙区で街頭演説を行う自民党の西田昌司候補と応援に駆けつけた小泉進次郎農相参院選25京都選挙区で街頭演説を行う自民党の西田昌司候補と応援に駆けつけた小泉進次郎農相

結果は2位当選となったものの、獲得票数は前回の改選時を大幅に下回る19万票にとどまった。陣営幹部は、「党や候補への信頼回復の道のりは、今後も長くなりそうだ」と、厳しい表情で語った。投開票日である20日の深夜、苦しい戦いからの解放感と、「自民党が守り抜いた貴重な議席」をつなぎ止めたという使命感。その両方を噛みしめるかのような万歳三唱が、開票センターに響き渡った。

立民埋没、参政猛追

一方、立憲民主党の山本和嘉子氏(57)の陣営に危機感が漂い始めたのは、選挙戦の中盤だった。各報道機関の情勢調査の結果や、実際の街頭活動での有権者の反応を見るにつけ、参政党の谷口青人氏(46)が猛烈な勢いで追い上げているのは明らかだった。山本陣営は「もう一段、ギアを上げなければならない」と、強い危機感を抱いたという。

京都の参議院選挙区は、与野党の思惑が交錯し、各候補者がそれぞれの課題を抱えながら戦い抜いた激戦区であった。国民の審判が下された後も、各党、各候補には、有権者の信頼を取り戻し、次なる選挙に向けて体制を立て直す長い道のりが待ち受けているだろう。