南海トラフ巨大地震:最悪29.8万人死者、減災目標に届かず

南海トラフ巨大地震、その脅威は依然として私たちの生活に影を落としています。30年以内に80%の確率で発生するとされるこの巨大地震について、内閣府の有識者検討会は新たな被害想定を発表しました。最悪のケースでは死者数が約29万8千人、全壊焼失建物は約235万棟と、約10年前の前回想定からの減少幅はわずかであり、政府が掲げる減災目標には程遠い結果となりました。

巨大地震の被害想定、10年前からほぼ変わらず

2012年と2013年に発表された前回の被害想定(死者32万3千人、全壊238万6千棟)と比較すると、今回の見直しで死者数は若干減少したものの、依然として甚大な被害が予想されています。今回の想定では、駿河湾から日向灘沖の震源域で発生するマグニチュード(M)9クラスの地震を想定し、最新の地盤や地形のデータを用いて震度、津波高、浸水面積を再計算しました。

alt 南海トラフ地震の想定震度分布図alt 南海トラフ地震の想定震度分布図

防災対策推進地域、拡大の可能性

国は現在、内陸を含む29都府県707市町村を防災対策の推進地域に指定しています。これらの地域は、昨年夏に初めて発表された南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の対象地域でもあります。今回の見直しでは、震度6弱以上の揺れや高さ3メートル以上の津波のおそれがある自治体が福島県から沖縄県の31都府県764市町村に拡大する可能性が示唆されており、指定地域の拡大につながることも考えられます。

専門家の声:更なる対策強化が必要

防災専門家の佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の被害想定は、南海トラフ巨大地震の脅威を改めて認識させるものだ。被害を最小限に抑えるためには、国、地方自治体、そして地域住民が一体となって防災対策を強化していく必要がある」と警鐘を鳴らしています。具体的には、津波避難タワーの整備、避難訓練の実施、防災用品の備蓄など、ハード・ソフト両面での対策が重要となります。

各家庭でもできる防災対策

私たち一人ひとりも、日頃から防災意識を高め、できる限りの備えをしておくことが大切です。家具の固定、非常食の備蓄、家族との避難計画の作成など、できることから始めてみましょう。

減災への取り組み、継続的な努力を

南海トラフ巨大地震は、いつ起きてもおかしくない差し迫った脅威です。政府や自治体の取り組みはもちろん重要ですが、私たち一人ひとりが防災意識を高め、日頃から備えておくことが、被害軽減につながる第一歩となります。

今回の被害想定を重く受け止め、更なる減災への取り組みを続けていく必要があります。