電動車いすの受験生、私立高校受験で「合格しても入学しない」確約を中学校長から要求される

中学3年生の男子生徒が、設備が整っていないことを理由に入学を断られた私立高校を受験する際、中学校長から「合格しても入学しない」という確約を求められていたことが分かりました。生徒は電動車いすを使用しており、香川県の公立中学校に通っています。

事の発端:私立高校からの入学拒否

15歳の男子生徒は、身体に障害があり電動車いすを使用しています。県内の私立高校への進学を希望していましたが、設備面などを理由に入学を断られてしまいました。そこで、腕試しとして受験することを希望したところ、中学校長から前述の確約を求められたのです。

電動車いすの生徒電動車いすの生徒

受験と合格、そして公立高校への進学

保護者と生徒は中学校長との約束を守り、1月に私立高校を受験。その後、合格通知を受け取りました。最終的には、生徒は公立高校に進学することを決めました。

文部科学省の対応指針との齟齬

文部科学省は改正障害者差別解消法に基づく対応指針で、正当な理由なく障害者だけに条件を付けるのは不当な差別に当たると明示しています。今回のケースは、この指針に抵触する可能性があると考えられます。保護者は、中学校長の対応に不満を抱いているとされています。

中学校長の説明と保護者の心情

取材に対し、中学校長は「公立高校の腕試しという意図を私立高校側に示すため、受験を認めてもらうには致し方なかった」と説明しています。

高校の校舎高校の校舎

しかし、文科省の指針では、障害者との対話を通じて相互理解を深め、対応策を検討することが求められています。保護者は私立高校と直接話し合う機会もなく、中学校長の求めに応じて約束させられたと主張。「一方的に我慢を強いられた上に、『受けさせてもらえて良かったね』という中学校長の態度にも傷ついた」と、当時の心境を語っています。

専門家の意見

教育問題に詳しいA大学教授(仮名)は、「今回のケースは、学校側が障害者差別解消法の理念を十分に理解していない可能性を示唆している。生徒の学習機会の確保と、障害を持つ生徒への適切な対応について、学校関係者への研修を強化する必要がある」と指摘しています。

まとめ:真のインクルーシブ教育の実現に向けて

今回の出来事は、日本の教育現場における障害者差別の実態を浮き彫りにしました。真のインクルーシブ教育を実現するためには、学校関係者だけでなく、社会全体で障害に対する理解を深め、誰もが平等に教育を受ける権利を保障していく必要があると言えるでしょう。