2050年の日本:消えゆく農業、未来への提言

日本の食卓を支える農業の未来に、深刻な影が落ちている。食料自給率の低下、米価の高騰、そして高齢化と後継者不足。このままでは、2050年には日本の農業は消滅してしまうかもしれない。この記事では、秋田県大潟村あきたこまち生産者協会の涌井徹会長の提言を基に、日本の農業が抱える課題と未来への展望を探る。

食料危機の現実:米不足が突きつける日本の脆弱性

近年の米不足は、日本の食料安全保障の脆弱性を露呈させたと言えるだろう。涌井会長は、減反政策の長期化による生産力の低下こそが、この事態を招いた根本的な原因だと指摘する。

秋田県大潟村の田んぼ風景秋田県大潟村の田んぼ風景

一時的な米価高騰は農家にとってプラスに見えるかもしれない。しかし、物価高騰の中、消費者がより安価な輸入米や小麦に流れる可能性も高く、結果として国内の米需要はさらに減少し、離農を加速させる悪循環に陥る恐れがある。

減反政策の功罪:50年の歴史がもたらしたもの

戦後の米余りを解消するために導入された減反政策。しかし、50年以上続いたこの政策は、日本の農業に深刻な歪みをもたらした。涌井会長が入植した1970年には1400万トンだった米の収穫量は、現在では半減の700万トンにまで落ち込んでいる。耕作面積の減少も深刻で、2030年には東北地方全体の耕作面積に匹敵する92万ヘクタールもの農地が失われると予測されている。

農業の未来:家業から産業への転換

日本の農業従事者の平均年齢は67〜68歳。2040年には基幹的農業従事者数は現在の130万人から30万人まで減少すると見込まれている。この深刻な状況を打破するためには、農業を「家業」から「産業」へと転換させる必要があると、涌井会長は提言する。

大潟村あきたこまち生産者協会の涌井徹会長大潟村あきたこまち生産者協会の涌井徹会長

農業の近代化、スマート農業の導入、そして若者にとって魅力的な職業としての農業の確立。これらが、日本の農業の未来を拓く鍵となるだろう。「食」の安全保障を守るためにも、農業の持続可能な発展に向けた取り組みが急務となっている。

2050年の農業:希望を描くために

食料自給率の向上、持続可能な農業の実現、そして未来世代への食の継承。これらは、私たちが2050年に向けて取り組むべき重要な課題だ。日本の農業の未来は、私たち一人ひとりの意識と行動にかかっている。