韓国の文在寅政権が8月に日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定して以降、日本政府は外交当局間の協議などで韓国側に何度も再考を促してきた。北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返す中、協定が失効すれば、日米韓の安全保障協力に影響が出かねないためだ。韓国側は、GSOMIAと日本の対韓輸出管理厳格化の見直しを結びつけており、翻意の気配は乏しいが、日本政府は引き続き韓国側の対応を待つ構えだ。
「我が国の一貫した立場に基づいて、引き続き韓国側に賢明な対応を、強く求めていきたい」
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は15日の記者会見で、韓国政府に重ねて再考を促した。
韓国政府が8月23日、日本政府による対韓輸出管理厳格化などを理由としてGSOMIAの破棄を決定したのに対し、日本政府は「現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応」(菅氏)などと指摘してきた。
貿易と安全保障協力は「全く次元が異なる問題」(外務省幹部)であり、両者を結びつけるのは筋違いだからだ。
だが、韓国側はGSOMIAの失効まで2週間を切った今月10日、韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が「韓日関係が正常化されれば(GSOMIAの)延長を検討する」と述べ、輸出管理厳格化を見直すよう求めた。
「韓国は、ボールが自分たちのところにあるのが分かっていない」
日本政府高官はあきれた様子で語る。
こうした中、河野太郎防衛相は17日、タイ・バンコクで、東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大国防相会議に合わせて韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談する方向だ。
23日午前0時に迫るGSOMIAの失効を前に、日韓両国の閣僚が対話する最後の機会になる可能性があり、外務省幹部は「時計の針はどんどん進んでいる。韓国側の常識ある判断を求めたい」と話している。
(力武崇樹)